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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/9/9
http://www.asanoshiro.org/                  第105号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「自民党総裁選」(浅野史郎)

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 ○「自民党総裁選」(浅野史郎)

 自民党の総裁選びが、佳境に入りつつある。毎日毎日情勢が動いているの
で、この稿も書きにくいのであるが、これを書いている9月7日の新聞各紙
の報道では、小泉純一郎首相の対抗馬として、亀井静香、藤井孝男、高村正
彦の三氏が名乗りを上げている。投票は、20日(土)ということだから、
これからいろいろな動きが活発になっていくのだろう。

 自民党の総裁選は、自民党が野党であった一時期を除いては、即総理大臣
選びであったから、国民的にも大きな関心を集めてきた。2001年4月の
総裁選からは、国会議員の票に加えて、地方の党員も一定のルールで投票に
参加することになった。この時には、現在の小泉純一郎首相が総裁に選ばれ
たが、このルールであったからこその地滑り的な勝利であった。これまでの
選び方でも、小泉さんが総裁に選ばれただろうが、こうまで大勝利を収める
ことになったかどうか。それよりも、なによりも、この総裁選の過程が注目
の的になり、自民党に対する国民一般の期待が大いに高まるという効果が
あった。その意味では、この選出方法は大ヒットである。

 「大ヒット」という言い方をすると、底が浅いような印象になるが、そう
ではない。それ以上の意味を持つ。直前に、森喜朗前首相が総裁に就任した
経緯と比較すれば、そのことは明確になる。

 小渕恵三元首相の急逝を受けて、急遽総理・総裁となるべき人物を選ばな
ければならなくなった。その際に、四人だか五人の「実力者」が、「密室で」
森氏擁立を決めてしまった。これが不幸の始まり。たった1年での首相降板
は、森喜朗氏の首相としての資質の問題というよりは、総理・総裁就任の正
統性のほうに問題があったからだと私は思っている。確かに、最終的には、
自民党の両院議員総会で総裁に選出されたのであるから、形式的な正統性に
なんら疑問の余地はないのだが、大事なことは、そこに至る経緯である。

 当時連載していたエッセイで書いた覚えがある。進むも地獄、退くも地獄
といった究極の選択をしなければならない局面で、森首相の心の目に国民全
般の群像が映っただろうか。首相としての孤独な立場を意識したときに、勇
気を与えてくれるのは、そういった群像であって、決して四人や五人の「お
世話になった人」の姿ではないはずである。

 そのコントラストとして、小泉純一郎首相の登場がある。彼の個人的な資
質もあるが、あの総裁選での選ばれ方が、小泉首相をして「自民党をぶっ壊
す」といったことまで言わせる蛮勇を与えている。「俺の後ろには、俺を自
民党総裁に選んでくれた何百万人の人たちが控えている」。そう本人には思
えることが、とても大きい。

 小泉首相は、自民党総裁選に向けて作成する政策を、極めて大事なものと
重視している。「この政策を掲げて総裁に選ばれたら、それは来るべき衆議
院議員選挙での自民党の選挙公約になるから、みんな従ってもらう」と小泉
首相が言ったことが、「独裁的でけしからん」と自民党内で批判されたこと
は、記憶に新しい。その火種は、いまだにくすぶっているのかもしれない。
それにしても、この批判は、完全に的をはずれている。小泉首相が、自分の
政策の位置付けについて言っていることは、至極あたりまえのことに過ぎな
い。政党政治の常道をそのまま言葉にしただけのことである。

 こういったあたりまえの発言に、過剰なまでの反応が示されるというのは、
これまであたりまえのことが行われていなかったということにほかならない。
自民党の総裁選びも、国政選挙のありかたも、政策で決まるのではなく、候
補者の人柄とか、周りにどれだけ気遣いをするかとか、利益誘導の実績、資
金力といったことがポイントだったのではないか。「小泉首相の人気にす
がって戦ったら、総選挙では有利」とか、閣僚や党の要職といったポストに
就くためには、勝ち馬に乗っていたほうがいいとか、そういったことで選ぶ
のだとすれば、そういっ?た安易な思惑は、いずれ、国民には見透かされると
は思う。

 今年の2月4日発行のメルマガ第74号で、「マニフェスト」について書
いた。まさに、政策綱領、マニフェストがキーワードである。民主党は次の
総選挙で、具体的な目標と達成期限と財源を明示したマニフェストを掲げて
闘うことを明言しているが、他の政党も何らかの形では同様の動きをするこ
とになるだろう。その前段に、自民党の総裁選がある。

 そういったことも考え合わせると、今回の自民党総裁選では、小泉純一郎
首相が再び選ばれるのか、それとも反小泉陣営が勝つのかといった結果だけ
でなく、それ以上に、どういった政策が提示されるのかが重要である。そし
て、誰が選ばれるにしろ、そのあとの総選挙において、自民党はこの総裁選
で選び取られたことになる政策をどう扱うのかが、大きな論点にならざるを
得ない。総裁選で負けた側の陣営も含めて、どういった体制で総選挙を戦う
のかということも興味深い。

 そういったもろもろが、国民の注視の下で、展開されることになる。今回
の自民党総裁選が日本の政治が変わっていく、一つの節目になる予感も、私
にはある。

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> [編集後記] <

 私のような比較的若い年代の有権者には、自民党総裁選は「おもしろい」
トピックではあっても「重要な」事柄だと、あまり認識されていないようで
す。

 今回の総裁選は、国民が政治に参加できている実感を取り戻すきっかけに
なるのでしょうか。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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