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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/11/25
http://www.asanoshiro.org/                  第116号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「上海にて」(浅野史郎)

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 ○「上海にて」(浅野史郎)

 今月のはじめ、上海にでかけた。4,5年前に、杭州、寧波、紹興に公務
で行った時に、一晩だけ泊って、雨の朝に市内をジョギングした記憶がある。
今回は、「東北フェア in 上海」という行事に参加するための上海入りで、
11月5日から9日までの滞在であった。

 「東北フェア in 上海」は、日本の東北地方の企業と上海を中心とする中
国企業の間で、ビジネス・チャンスを探ろうという催しである。東北地方か
ら24社、上海市を中心とする中国華東地区から130社が参加した。商談
はのべ約300件、日本側企業1社あたり12件という実績を上げたので、
初めての試みとしては、相当の効果である。

 これに加えて、東北地域観光セミナーを開催し、中国側旅行エージェント
16社の参加を得た。上海交通大学の産学連携の取組みについての勉強会と
して「産学連携セミナー」を開催した。その他に、「仙台港セミナー」、東
北地域観光物産紹介展を開催し、仙台市、宮城県、東北という地名にあまり
なじみがなかった上海の人達へのアピールはなし得たと思う。

 ここでは、そんな行事の一つひとつを紹介するのではない。まずは、我々
東北にとって、宮城県にとって、なぜ今上海かということを論じなければな
らない。

 なんといっても、今や世界の工場になろうとしている中国。その中で、群
を抜いて発展し、さらなる成長を秘めている地域が上海を中心とする華東地
区である。これからは、国と国との関係だけではなくて、地方と地方とが企
業活動ということでも結びつきを深めていくべき時代である。ビジネスとい
うことで中国とお付き合いをするということになれば、どことでもというわ
けにはいかない。まずは、上海が中心になるのは、ある意味では当然である。
上海のほうから見ても、日本では東京や大阪だけではないということを、東
北地方として知らしめておかなければならない。日本国内での競争でもある。

 その上海であるが、現地でお会いする人ごとに、「上海は何回目ですか、
前回は何年前ですか、だいぶ変わりましたでしょ」と話し掛けられた。ここ
4,5年の上海の発展ぶりは上海の人にとって自慢でないはずはない。その
ことを外国人たる私達からも確認したいという気持ちの表われなのだろう。

 確かに、浦東国際空港の発展ぶり、そこから市内に入る高速道路をはじめ
とするハイウェイ網の整備状況、地下鉄、高層ビル群・・・。目に入るあら
ゆるものが、上海の経済的発展のありさまを示している。浦東開発特区の開
発は、これからが本番という途中段階であるにもかかわらず、びっくりする
ような充実ぶりで、度肝を抜かれる。私も試乗したが、市内から国際空港ま
での33キロを7分で結ぶリニア・モータ・カーが出す時速430キロのス
ピードには、「日本ではまだまだ実験段階なのに・・・」の思いを抱いてし
まうほどであった。

 一方において、全く交通ルールを全く無視している自転車や歩行者、雑踏
の中で平然とつばを吐く人、地下鉄で、降りる客を押し分けて車内に殺到す
る人達の姿を見せつけられると、大衆レベルではまだまだかという感慨は
持ってしまうが、問題はそれだけではない。

 上海の経済的発展は、国営企業を含む国内企業というよりは、外資系企業
の活躍によってもたらされている。取引きの決済方法の未熟さ、証券取引所
機能の未整備、ブランド商品の模倣品の氾濫や著作権侵害商品に見られる無
法状態など、まだまだ改善すべき部分は多い。何よりも、上海のような大都
市住民と農村地帯出身の人達との間に、国内における外国人問題の如き格差、
差別が存在していることが大きい。

 朝のジョギングで出会った登校中の小学生、中学生が賢そうに見えたのは、
ただの印象論でしかないが、今回のミッションに同行いただいた現地の通訳
の人達が、そろいもそろって日本語が素晴らしく上手であること(冗談でな
く、彼等より日本語ができない日本人はたくさんいると感じるほど)を見る
につけ、この国の潜在力と向上心とを実感する。  「この国の」と書いたが、実は、そこが問題。広大な国土、十数億の人口 の国である。上海のような近代的な大都市もあるが、人口の大半は、農村地 帯に住んでいる。生活程度、教育程度、産業の集積などにおいて、大都市と は大きな格差がある。すべてが上海のように良質の労働力、人材に恵まれて いるわけではない。  そういった国とどうつきあっていくか。中でも、上海とどういう関係を築 いていくか。地方対地方として、ビジネス面でもお互いのためになるような 関係を、これからしっかりと作っていかなければならない。  ほんの短い期間の上海滞在では、何もわからない。ただ、ものすごいエネ ルギーと、未来への可能性は確かに感じる。日本と中国、同じ東アジアの国 同士である。仙台空港からの直行便で2時間半でつながっている仙台と上海。 そんな近いところと、本当の意味で近い付き合いをしていくことは、とても 大事なことである。短い滞在であっても、そんなことだけは確信できた。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  私の海外体験は一度きり。6年前、シンガポールとマレーシアを一週間で まわった時だけ。ということで、全くの井の中の蛙状態です。  いつもは「足下の泉」と強がっていますが、やはり外から日本を見てみた いと、この頃強く感じています。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org     ※今週は「読者のみなさまから」はお休みいたしました。      お気軽にご感想をお寄せ下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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