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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/12/23
http://www.asanoshiro.org/                  第120号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「イラクへの自衛隊派遣」(浅野史郎)

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 ○「イラクへの自衛隊派遣」(浅野史郎)

 今回は、むずかしいトピックを取り上げてしまった。私としては、今回の
自衛隊のイラクへの派遣は、「イラク振興支援特別措置法」という法的根拠
を持っていることであるし、小泉首相が政治的責任を負う覚悟で決めたこと
でもあるので、賛成・反対という次元ではなく考えることとしたい。まずは、
それを前提とし、その上で、気がかりなこと、押さえておかなければならな
いことをまとめておくということが大事である。

 気がかりなことの第一は、憲法はどうなったのかということである。現憲
法の下では、基本的には、自衛隊は、日本の防衛のために存在を許されてい
ると考えるべきではないのか。個々の自衛隊員としてではなくて、組織とし
ての、つまり、指揮命令系統が明確になっている形での自衛隊が、海外に出
ていくということは、現憲法下で許されているかどうかは別としても、想定
されていたのかどうか、もう少し吟味が必要だろう。今回は、戦闘ではなく
て、国際平和への貢献のためということであって、そのための特別の法律を
作って行くのだから問題はないかもしれない。しかし、そういう事態が起こ
るたびごとに、特別法を作って対応するというのがいいのかどうか。

 憲法について、論じておかなければならないことのもう一つは、憲法(解
釈)の変遷ということである。「解釈」というのをカッコ書きにしたが、ま
さに、憲法条文は変えずに、その解釈で自衛隊の海外派遣問題なしとするこ
とに関わる。憲法改正という大議論をしないで済ませるということでは、
「大人の知恵」を働かせているように見える。しかし、外から、つまり外国
の目から見て、これがどう思われるかに、もう少し気を使ってもよい。憲法
というのは、その国のありようを示す根幹である。プリンシプル、原理原則
といったものである。その原理原則は簡単に変えられないものとして、憲法
の形で成文化している。日本という国は、このプリンシプル、原理原則を、
その時々の状況に応じて簡単に変える国なのだという評価を外国からなされ
ることの、長い目で見ての影響を考えなくてよいのであろうか。

 憲法については、これとは反対の意味での懸念がある。上記に示した「外
国の目」というのは、日本国憲法について相当の知識・見識がある外国の人
の目から見てということである。ほとんどの「外国の人」は、日本国憲法の
中身を知らない。「外国の人」の中には、イラクの人も入る。日本国憲法に
第九条というのがあって、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を
解決する手段としては、永久にこれを放棄する」、「陸海空軍その他の戦力
は、これを保持しない」と規定されていることを知っている人はほとんどい
ないだろう。とすれば、イラクに赴いた自衛隊が、実は、武力ではない、戦
力ではないということなど、夢想もしない。れっきとした軍隊と見るのが素
直なところだろう。「この場面で、なぜ武力行使しないのか」といった疑問
が生じることになる。これが、自衛隊への、ひいては日本への不信感にまで
いかないかどうか。

 気がかりの第二は、今回の派遣は、誰の期待に応えたことになるのかとい
うこと。イラクの人たちは、日本の自衛隊に来て欲しいと明示的にリクエス
トしたのだろうか。国際協調ということが言われているが、国連の枠組みで
の派遣ではない。アメリカの期待ということだが、アメリカ政府の中で、日
本の自衛隊をイラクに出すべきだと考えている人は、ごくごく限られた範囲
であると聞いたことがある。むずかしく言えば、派遣の大義ということにな
る。派遣される自衛隊員とその家族が、「自分は誰のため、何のためにここ
にいて身を危険にさらしているのか」ということに納得がいかなければなら
ない。そうでなければ、万が一のことがあったとき、救われない思いになる
だろう。

 考える事項の第三は、今回のイラク支援において、日本にしかできない
「日本らしさ」を示すことができないだろうかということ。外国で戦力展開
できないという制約の中で、日本らしい協力の仕方があるのではないか。自 衛隊員だけでなく、いろいろな技術や経験を持ったボランティアの人たちを ネットワーク化できないか。こういうことに、知恵を結集すべきものと思う。  多くの人たちが、いろいろな角度から論じ尽くしている感があるテーマで ある。私としては、ちょっと違った観点で私見を述べてみた。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  イラクへの自衛隊派遣を「むずかしい話題」にしてしまったのは、誰なん でしょうか。結局は、憲法と自衛隊との関係をはっきりさせなければいけな いのでしょうが、それにしてもと思います。  世界中の人々が、戦争やテロに怯えなくてすむ日を創り出すために、もっ と知恵を使うべきなのではないでしょうか。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org     ※今週は「読者のみなさまから」はお休みいたしました。      お気軽にご感想をお寄せ下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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