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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/1/6
http://www.asanoshiro.org/                  第122号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「年頭にあたって」(浅野史郎)

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 ○「年頭にあたって」(浅野史郎)

 新年明けましておめでとうございます。今年こそ、このメルマガ愛読者の
みなさまにとって、素晴らしい年になりますように、心からお祈り申し上げ
ます。

 今年の正月休みは、公務のたぐいは全くはいっておらず、家族水入らずで、
ゆったりと過ごすことができた。そのせいで、テレビや新聞にじっくりと目
を通す機会も、ふだんよりは多かったような気がする。年の変わり目にあ
たって、足元をしっかりと見つめつつ、将来の展望を語るといった論調が目
に付いた。

 別に、この時期だけではないが、日本をめぐる状況を論じる調子としては、
悲観的なものが多い。日本にとっての「失われた十年」、米国べったりの自
主性なき外交、政治の混迷、明るさの見えない景気動向、地方経済の疲弊、
老後不安、自分本位の利己的な社会、夢も覇気もない子ども達などなど。悲
観的というだけでなく、自虐的とさえ言い得るような評価も多く目にするよ
うになっている。

 せめて、年の始めぐらいは、前向きなものの言い方をしたいものである。
年初恒例の仙台商工会議所新年祝賀会の場では、このところ毎年、「けなす
のではなく、ほめ合いましょう」というメッセージを含んだ挨拶を申し上げ
ている。できないことを数え上げるのではなく、できることを誇る、失った
ものを嘆くのではなく、残っているものを大事にする。そんな言い方もして
いる。今年の挨拶では、自虐的、悲観的になるのではなく、もう少し自分、
自分の地域、自分の国に誇りを持とうということをお話させてもらった。

 他人が作った基準で自分自身を評価して、その結果が悪いといって嘆くの
もいかがなものか。基準は自分で作り上げるといった自負を持つことも必要
であろう。例えば、国際社会での日本の評価である。

 イラクへの自衛隊派遣をめぐっての議論の中で、イラク派遣をしなければ
国際社会の中での発言力が低下するとか、集団的自衛権の行使は国際的常識
であるというときに引用される「国際社会」、「国際的常識」とはなんだろ
うか。もう少し、吟味をする必要がある。その「国際」の中に、アラブ諸国、
アジアの国々、弱小、開発途上と呼ばれる国は含まれているのだろうか。文
脈によっては、国際=アメリカに近いように読めるところもある。そこまで
行かなくとも、欧米先進諸国=国際社会というのが、論者の暗黙の前提であ
るようにも思える。それでいいのか。

 1月4日、TBSテレビ「サンデー・モーニング」の特集において、日本
国憲法の起草者である米国人が、憲法第9条(戦争放棄、軍備及び交戦権の
否認)は、日本への懲罰的なものではなくて、むしろこれからのモデルとし
て制定したと発言していた。少なくとも、制定時においてはそうであった。
日本の手足を縛るためのものとしてではなく、新しい国家像として、独立国
のあり方としての理想のようなものを掲げたということであろう。こういっ
た理想を掲げることが可能だったのは、当時の日本が軍事的にはゼロから出
発せざるを得なかったという「幸運」に恵まれていたからだと考えることは
できないだろうか。

 イラクへの自衛隊派遣うんぬんを言いたいのではない。言いたいのは、国
際社会の中で、異端のように見えるとしても、そのことに日本の独自性を見
出すことができないのかということである。独自性をさらに進めて、そのこ
とに誇りを持てないのか。そのことにこそ、日本の独立国家としての役割が
あると主張することはできないのであろうか。最低限のことを言えば、第
120回(12.23)「イラクへの自衛隊派遣」で書いたように、国家の
プリンシプル(原理原則)である憲法の解釈を広げることによって問題の解
決を図るという「大人の知恵」は、それこそ、(欧米先進国に止まらない)
「国際社会」によって高く評価されることはないことに、思いを致すべきで
ある。

 国家的レベルでの話は疲れる。話題を変える。

 元日の夜9時から、「NHKスペシャル」で「村上龍とリーダーたちの対
話」を途中からであるが見た。そこで、リーダーの一人である猪口邦子さん が、上記のようなことを語っていたのだが、それはともかく。そのあと村上 龍さんが総括して、一人ひとりが目標を持つことが幸せを得る条件だという ことを話していた。  その具体化ということなのだろうか、村上さんが書いた「13歳のハロー ワーク」(幻冬舎)という本も紹介していた。その本では、子どもたちが目 標を持って、自分の職業を選び取っていくための方法を、それぞれの職業ご とに説明している。まさに、人が作った基準に照らして、一番になるとかで はなくて、自分の適性と興味に基づいて目標を立て、それに合った職業を選 んでいく。実は、年末に、村上さんの署名が入ったこの本が送られてきたの だが、職場に置いてきてしまい、一部しか読んでいない。お礼状も出してい ない。  突然、年末の紅白歌合戦のことを書くが、大トリはスマップであり、歌っ たのは「世界で一つだけの花」。まさに、一番でなくていい、世界で一つだ けの花を目指そうよというメッセージ・ソングである。「ナンバーワンでは なく、オンリーワンに」ということ。  イラクへの自衛隊派遣などという硬いことまで書くつもりはなく、最後は 紅白歌合戦でバランスを取ったような稿になってしまった。年のはじめだけ あって、「おめでたい」奴と言われないうちに、パソコンを閉じる。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  新年明けましておめでとうございます。本年も当メルマガをよろしくお願 いいたします。  元朝参りを行った神社で、久しぶりに大吉を引きました。去年が小吉だっ たので、それと比較すれば良い年になるということでしょうか。ただし、良 い年にするのは、自分の行動次第だと、そのおみくじにもありましたが。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org     ※今週は「読者のみなさまから」はお休みいたしました。      お気軽にご感想をお寄せ下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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