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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/1/13
http://www.asanoshiro.org/                  第123号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「船形コロニー解体宣言から1年」(浅野史郎)

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 ○「船形コロニー解体宣言から1年」(浅野史郎)

  平成14年11月23日、宮城県福祉事業団が主催する「第2回福祉セ
ミナー in みやぎ」において、「船形コロニー解体宣言」がなされた。この
ことについては、このメルマガの第66号(2002.12.10)「船形
コロニー解体宣言」に書いた。あれから、ほぼ1年が過ぎたのである。「脱
施設」ではなく、「解体」という衝撃的な表現もあり、全国の関係者の大き
な関心を集めることになったのだが、一体、この1年間に何が起きて、何が
変わったのであろうか。

 たまたま、この週末に、二つの福祉セミナーにスピーカーとして出席する
機会があった。一つは、1月10日(土)、鳥取県米子市において開催され
た「福祉フォーラム4in鳥取」というもの。ご当地鳥取県の片山善博知事、
滋賀県の國松善次知事との鼎談に加えさせてもらった。知的障害者の生活の
場としては、施設から地域へと移行するべきことは当然の前提として、その
際の地域生活支援の仕組みをどう構築していくかというのが、基本的問題意
識であった。その中で、昨年4月に始められた支援費制度の課題と今後の方
向などについて、議論された。

 二つ目は、その翌日、11日(日)に開催された「第3回福祉セミナー 
in みやぎ」である。今回のテーマは、「地域でのあたりまえの生活を目指
して――船形コロニー解体宣言 そして1年!!」というもの。このセミ
ナーでは、全日本手をつなぐ育成会理事長の藤原治さん、日本知的障害者福
祉協会副会長の松下良紀さんとともに鼎談をすることになった。

 親の会の代表である藤原さんの発言は明快である。「施設解体は全面的に
賛成。親の会は権利擁護団体であり、消費者団体である。消費者が必要とす
る施策をしてくれれば、喜んで利用する。さもなければ、利用しない」とい
うもの。施設運営団体を代表した松下さんも、「解体には双手を上げて賛成。
宮城県での試みのお手並み拝見をしたい」と発言した。「お手並み拝見」と
いうのは、期待しつつということだろうと理解するが、それはそれで理解で
きる対応だとは思う。

 どちらのセミナーも、600人近い参加者であり、この問題への関心の深
さを示している。世の中は、明らかに変わっている。今から17年前、私が
厚生省障害福祉課長を務めていた頃は、こういった雰囲気ではなかった。私
としては、北海道庁で福祉課長をしていた時の経験からも、知的障害者の入
所施設には大きな疑問を持ち、その想いは、その後に厚生省障害福祉課長を
務めている間にますます深いものになった。その辺のことを一冊の本にした
のが、平成元年に出した私の最初の著作「豊かな福祉社会への助走」であっ
た。

 その中では、知的障害者の福祉を考えるキーワードとして、地域、人権、
ふつうの生活の三つを上げた。知的障害者に対して、特別な場で特別な生活
を強いるのではなく、ふつうの生活を送れるように支援するのが、障害者の
人権を守ることになる。そして、普通の生活は、地域の中にしかないではな
いかということを言いたかった。

 このことが、今では、知的障害者の福祉に関わる多くの実践者にとって、
常識と考えられるまでになってきていることを知って、感慨深い。その結果
が「解体宣言」であり、その「解体宣言」に触発されて、さらに多くの人た
ちが、知的障害者の生活を地域で支える仕事に全力を尽くそうという動きに
なっている。

 長野県の大型入所施設である西駒郷は、426名が生活しているが、この
西駒郷においても、施設を運営する側からの発意により、脱施設が具体化し
ようとしている。「福祉セミナー in みやぎ」には、西駒郷自律支援部長
の山田優さんが参加して意見を発表した。地域生活への移行を進める理念と
して、利用者の思いが何よりも優先する、制度疲弊・機能破綻を素直に認め
る、支援の主体は家族ではなく地域社会でということを上げている。こう
いった基本的な理念の下で、平成15年から5年間で、200ないし260
名の入所者の地域への移行を進めるという計画である。

 宮城県、そして長野県から発して、大型施設に入所している知的障害者を
地域に移行させていく動きが、全国に広がっていこうとしている。西駒郷で
も意識されているが、西駒郷の脱施設化は、モデルではなく普遍化、一般化
を目指すものである。船形コロニーだけ解体すればそれでいい、他の民間の
入所施設は22世紀までもずっと残していくというわけにはいかない。それ
では、宮城県の施策として論理一貫しない。この辺のこと、今の時点でしっ
かりと議論を深めておかなければならない。

 船形コロニー解体宣言から1年。全国にその波紋は広がり、そして実践も
進んでいる。基本をはずさない理念についての議論も、この際、はずすこと
はできない。そんなことを考えさせられる機会であった。

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 新年早々、ポカばかりをしてしまい、みなさまにはご迷惑をおかけしまし
た。やっと、正月ぼけもおさまりつつあります。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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