浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/1/20
http://www.asanoshiro.org/　　　　　　　　　　　　　　　　　 第124号
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　[週刊コラム・走りながら考えた]
　　○「成人式『騒動』」（浅野史郎）

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　○「成人式『騒動』」（浅野史郎）

　各地の成人式で、騒動が起きている。ここ毎年のことである。今年の成人
式でも、川崎市で、「成人式サポーターグループ」の代表を務めていた新成
人の男性が、演台に土足で上がって、式典批判の演説をしたことが、大きな
ニュースとして取り上げられた。静岡県伊東市では、式典中に酒を飲んで騒
ぎ、演壇に上って市長の挨拶を邪魔した新成人に対して、市長が刑事告訴も
辞せずという姿勢で臨んでいるとのこと。わが宮城県の古川市でも、式典が
終わった後のことであるが、酒を飲んで騒いだ挙句に怪我をした新成人のた
めに呼ばれた救急車を蹴っ飛ばしたり、救急隊員に暴言を吐いたりの事件が
あった。

　成人式は、それぞれの市町村ごとの主催によるものであり、私は出席した
ことがないので、実際にどういった状況なのかわからない。また、自分の成
人式にも出た覚えがないので、昔と比べることもできない。だから、マスコ
ミ報道で知るしかないのであるが、それにしても、だいぶ荒れる成人式が多
いことには、驚くと同時に、嘆かわしくも思う。

　一体、何が彼等をして騒がせるのだろうか。今年の川崎市の成人式の例で
は、批判演説をした若者が言いたかったのは、政治家の来賓挨拶や紹介は選
挙目当てに見えて、成人を祝う気持ちが伝わらないといったことらしい。こ
の男性は、「成人式サポーターグループ」の代表を務めていたということだ
が、だったら、自分の望む形の式典にできる立場だったのではないか。市側
が既に決めてしまっていて、それはできない相談だったのもしれない。

　挨拶が続いてつまらないというなら、始めから出席しなければ良さそうな
ものだが、成人式は本人にとっては１回限りだから、出てみるまではわから
なかったということかもしれない。そもそも式典は、つまらないと言えばつ
まらないもの。それを我慢するのが、成人のあかしと言う人もいる。

　「近頃の若い奴らは・・・」で始まる世代論がある。けじめがない、礼儀
を知らない、我慢ができない、などなど。私も県内の高校などの式典に出る
機会があるが、生徒達がぴしっとしているほうが例外のような感じもする。
私があいさつをしている間も、最前列で堂々と居眠りをしている生徒がいる。
生徒の大部分が校歌を歌わない高校に、驚かされたこともある。

　こういう生徒が成人になるのだから、「つまらない」成人式をがまんでき
ないのは、当然かもしれない。だったら、どうしたらいいのだろうか。

　つまらないものにしないために、涙ぐましい工夫、努力をしている自治体
がある。お金をかけて、準備時間と労力をかけての至れり尽せり。一方、企
画や式典の運営を新成人の自主性に相当程度任せるところもあるようだ。

　しかし、改めて考えてみる。成人式は、誰のための、何のための行事なの
だろうか。成人の日が定められたのは、戦後のことだというが、なぜ１月
１５日にしたのか、なぜ国民の祝日にまでするのかも、確かには認識してい
ない。各自治体が、税金を使って式典を実施するのはよいとしても、その式
典で祝われている側が騒ぎを起こしてしまうとなると、ちょっと待てよ、そ
んなにまでして開催の必要があるのかという気持ちにはなる。

　話は急に飛ぶのであるが、各種のシンポジウム、フォーラムや講演会など。
壇上に上がって講演したり、パネラーを務めることが多い立場から言わせて
もらうと、参加者が動員されて来ているのか、自分の意思で来ているのかは、
即座にわかる。熱心さが違う。さらに言えば、参加有料の場合は、参加者の
熱心度合は格段に高い。それはそうだろう。「元を取ろう」といったことだ
けでなく、参加の動機付けからして、明確である。寝ているなんてことは、
とてももったいなくてできない。

　ということから話を運ぶと、成人式への出席を有料にということは無理と
しても、出席者の意欲を高める動機付けはないものだろうか。逆に、毎年繰
り返される成人式での荒れ方をマスコミが報道することが、騒ぐ側の「動機
付け」になっているのではないかと疑う。目立とうとして騒ぐ側からすれば、
報道、しかも全国報道までされることは、願ったり叶ったりである。思う壺
に、こちら側ははまらないように。

　そう言えば、昔は成人式は１月１５日と決まっていた。今では、１月の第
２月曜日とされているのは、連休を作る算段なのだろうが、仙台人とすれば、
少し異議あり。毎年１月１４日の夜には、私の近所の大崎八幡神社などで
「どんと祭」が行われる。正月の松飾りなどを焼く伝統行事であるが、これ
までは翌日は必ず休みだった。成人の日の移動により、そうでなくなったの
は、やはり残念ではある。

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>　［編集後記］　<

　私が経験した成人式も確かに「荒れ」ていたとは思います。報道されるほ
どの「荒れ」ではありませんでしたが、暴れるぐらいだったら来なければい
いのにとは思います。

　さて、来週号から、[読者のみなさんから]の欄が復活いたします。みなさ
ま、お楽しみに。

　それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。　（一馬）

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発行：浅野史郎・夢ネットワーク　メールマガジン編集局　渡辺一馬