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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/3/30
http://www.asanoshiro.org/                  第134号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「年金問題」(浅野史郎)

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 ○「年金問題」(浅野史郎)

 年金問題が世の関心を集めている。そのこと自体は、望ましいことである。
まずは、年金改革法案。年金制度を将来とも安定的に運営するための方策を、
この時点においてしっかり固めておくことは重要である。いろいろ論議はあ
るが、今国会中に可決成立にもっていかなければならない。負担増につなが
るのは参議院選挙で不利になるから、なんとか延ばしたいという自民党のホ
ンネの部分も聞こえてくるが、もっと本質的な議論をして欲しい。民主党に
しても、対案は提出するようであるが、政府案を闇雲に廃案に持ち込むこと
を目標にするというのも、合点がいかない。しっかりとした議論を展開し、
妥協すべきは妥協するという姿勢も必要ではないか。

 こんなことを言うのも、年金制度の改正は待ったなしだからである。ぐず
ぐずしている間にも、事態だけは進展していく。年金制度を漂流させてはな
らない。少子高齢化で、年金財政が厳しくなるのは、誰でもわかる。年金財
政に税金を投入して保険料の上昇を抑えるといっても、国民負担であること
は変わりはない。手品は使えないのである。年金受給世代と保険料及び税金
負担世代のバランスが、将来にわたってもしっかり確保できる制度体系にし
なければ、年金制度への信頼感を得ることはできない。まずは、そのことを
基本に考えるべきことは、このメルマガでも何度か指摘している。

 最近の年金制度への関心は、別なところからも湧き上がっている。例えば、
江角マキコさんを起用した国民年金のCM問題である。このCMが公開され
た当座は、国民年金の保険料を滞納している人への脅しのような言辞が批判
された。それが、ここにきて、その江角マキコさん自身の国民年金保険料滞
納の事実が明らかになったことから、もっと大きな批判が巻き起こってし
まった。

 誰が悪いのかという、毎度おなじみ犯人さがしである。CMのキャラク
ターとして採用する際に、江角さん側は「保険料は払ってます」と保証した
というのであるから、頼んだ社会保険庁としては、「騙された」ということ
だろう。しかし、もうちょっと突っ込んで確認しなかったのが甘過ぎるとい
う批判も出ている。「泣いた女がバカなのか、騙した男が悪いのか」状態と
でも言おうか。

 そもそも、こういった広告に、社会保険庁が年間6億円ほど使っていると
いうことへの批判の声もある。どうせ使うなら、有効に使えということでも
あるのだろう。それ以上に、この問題の背景には、もっと本質的な問題が潜
んでいる。そもそも、社会保険庁であれどこであれ、「保険料はちゃんと
払って下さいよ」と働きかけなければならない国民年金制度というのは、な
んなんだろうかということである。

 本来、年金制度は社会保険である。民間がやっている保険とは違って、社
会保険というのは強制加入が原則である。加入してもしなくてもいいという
のでは、世代間の支え合いは成り立たない。社会保険庁のCMが呼びかけて
いるように、国民年金は強制加入であって、保険料支払いも20歳以上で他
の公的年金に加入していない人にとっては、義務づけられている。しかし、
国民年金の保険料を滞納しても、将来の年金給付がなされなくなるという不
利益はあるとしても、直接的なおとがめはない。つまりは、強制加入が原則
の社会保険とはいっても、実態的には任意加入の様子を呈している。

 このことは、国民年金発足時からの宿命のようなものである。昭和36年
の制度発足時は、払い込んだ保険料に比べて、もらえる年金額が何倍もにも
達する制度設計であり、損得ということでいけば、圧倒的に得な制度であっ
た。その得する度合が、だんだんと下がって来ている。しかも、いずれ年金
制度はつぶれるとか、給付水準はどんどん下がっていくといったデマが飛び
交うものだから、ますます国民年金ばなれが進んでしまうことが?懸念される。

 年金制度の基本的な事項について、正しい知識が広まっていないことも問
題である。テレビのニュースショーで「江角さん問題」を取り上げていたの
を見ていたら、ちゃんとした評論家の方々が、不正確な知識を披露していた。
「自分の積み立ててきた保険料がどれだけになって、どう返ってくるのかわ
からない」(公的年金制度では、自分の保険料が戻ってくるのではなく、保
険料の納付が年金給付の権利につながるだけ。その給付は、受給時に保険料
(及び税金)を負担する人によって支えられる)、「自分の年金がいくらも
らえるのか、教えてもらえない」(聞けば教えてくれる)、「国民年金に
入っていても損するだけだ」(少なくとも、平均年齢まで生きるのであれば、
損はしない)といった類である。これはこれで、困った現象ではある。

 江角さんと社会保険庁には気の毒ではあるが、今回の「騒ぎ」によって、
むしろ年金制度への国民の関心は飛躍的に高まったのであるから、禍を転じ
て福となるように、もう一段のがんばりを期待したいものである。

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> [読者のみなさんから] <

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 <倉島さまから>

 このたびの週刊文春が書いた内容はそんなに大騒ぎする事かと疑問に思わ
ざるを得ない。

 出版差し止めの裁定は、メディア側にとっては一大事かもしれないが、知
事も言われるように行過ぎた記事、大衆を愚弄するようなワイドショウ、な
どどれだけ眉を顰めさせられたか報道に携わる者に反省があるのか疑問であ
る。

 当の週刊誌について言えば、時には議員の疑惑記事で辞職にまで追い込ん
だ実績は認めるが、一般的な流れから言えばヘアヌードを氾濫させ、飽きら
れた後にはスキャンダルで増版を狙ってきたのではないか。其処には公器と
しての一貫した哲学など微塵もなく、場当たり的な話題に食いつくだけの姿
勢が見えるだけに過ぎない。

 文字離れ、文書離れが浸透する中での出版業界の苦労には同情の余地は有
るが、世情に流されないバックボーンを常に維持してもらいたいものだ。



 本日は、お一人の感想を掲載いたしました。ご意見、ありがとうございま
した。

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 す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、
 投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの
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> [編集後記] <

 広告業に足を突っ込んでいる人間として、単純な疑問があります。6億の
広告費を使って、どれだけ納付率が上がったのでしょうか? 私は、あの広
告によって、払う気を無くした一人です。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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