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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/4/6
http://www.asanoshiro.org/                  第135号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「ほんとうの地方財政自立改革とは」(浅野史郎)

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 ○「ほんとうの地方財政自立改革とは」(浅野史郎)

 タイトルの「地方財政自立改革」は、我々が「三位一体改革」に代わる用
語として定着させようとしている言い方である。「我々」というのは、
「21世紀臨調知事・市長村長連合会議」(座長・増田寛也岩手県知事)の
メンバーのこと。この会議でまとめつつある提言では、「地方財政自立改革」
という理念を前面に出して改革を進めていこうとしている。

 「三位一体改革」では、方法論の表明でしかない。この改革の理念と目的
は、地方財政の自立である。だから、名は体を表わす言い方にしようという、
単純なことである。用語の問題だけではない。昨年12月16日発行のメル
マガ第119号「これが三位一体改革ですか」でも指摘したが、三位一体改
革の名の下に、地方財政の自立とは縁もゆかりもない「改革」がなされよう
としている。このことに、今のうちに明確に反論しておく必要性を感じる。

 地方財政自立改革では、国から地方への補助金・負担金を廃止して、その
分を国税から地方税への移譲に振り替えることで補うことが求められている。
補助金はひもつきである。一定の目的にしか使えない。また、それを遠慮す
るから他の補助金を増やしてくれということもダメである。これがタテワリ
ということ。この辺の問題点を親(国)からの仕送りを受ける息子(地方)
に譬えて説明しようとしたことがある。ここで繰り返してみたい。

 大学生の息子に親が仕送りをしている。そのやり方が変わっている。法律
の参考書が欲しかったら、息子は親に頼んで法律の参考書代の一部としてお
金を送ってもらう。経済学の参考書の補助を受けるのにも、別な形での申請
が必要。しかも、参考書は150頁から200頁までのもので、出版社はど
こそこのものでといった縛りがある。補助金の交付要綱で支出の中身が制約
を受けるのと同じこと。法律の参考書はいらないから、その代わりに、高額
の経済学の教科書が欲しいので額を増やしてくれというのは認められない。
映画を見たいなら、その分のお金を頼む、交通費、デート代、下宿代、その
他もろもろの支出は、支出項目ごとに、その一部にあてるということで親か
ら仕送りを受ける。安い下宿に移ってデート代を工面したいということも、
当然できない。これは、補助金のタテワリのことを言っている。

 息子が稼ぐアルバイト料は、どんな支出にも使える。同じく、奨学金。ア
ルバイト料を地方の独自財源である地方税に、奨学金を地方交付税に譬えて
いる。息子として、財政的に親から独立するために、アルバイト料を増やせ
る仕組みが欲しいということになる。これが、地方への税源移譲にあたる。
基本的には、アルバイトだけで大学生としての生活を賄う。息子には弟がい
るが、弟の通う大学にはアルバイトの口があまりないので、弟はその分奨学
金を増やしてもらう。これが地方交付税の財政調整機能ということで、独自
の税源が不充分な地方には、交付税を増やすという仕組みは必要ということ
になる。

 この譬え話は、いささか乱暴ではあるが、縛りがあり、タテワリで融通が
きかない補助金の弊害について言っているということはわかってもらえると
思う。平成16年度予算案の編成にあたって、生活保護の負担金割合を四分
の三から三分の二にするという「提案」がなされた。これを下宿代の仕送り
にあてはめれば、それで息子があまり高い下宿に住もうという気を起こさせ
ないのには効果あるかもしれないが、息子の経済的自立という観点からは、
全く逆の効果しかないことが理解できるだろう。

 各自治体において、平成16年度予算編成の最終局面にさしかっていた時
期に、突然、地方交付税の縮減が言い渡された。奨学金が突然削られたとい
うことにあたる。しかも、そのことが「三位一体改革を進めるために」とい
う名目でやられたので、地方は怒ったのである。それが地方財政の自立を進
めることにどうつながるのかという疑問を抱くのは当然である。

 ついでに、最近唐突に言われた地方再生交付金の創設についても一言。教
育・医療・農業の各分野で地方自治体から企画案を募り、有望な案には「地
方再生交付金」を配分するというものらしい。地方に案を考えさせて、その
創意工夫の知恵とやる気を競争させる。自治体の鼻先にニンジンをぶら下げ
て競争を促すという発想もいかがかと思うし、それぞれの「案」の良し悪し
を、一体全体、誰が判断評価するのかということもある。それよりも、なに
よりも、相変らず財源は国が握っていて、それを分配するという発想自体が
問題である。これが地方財政自立とどう結びつくのか。

 地方で学ぶ大学生の兄弟二人を並べておいて、「君たちがやりたいこと、
プランを出してごらん。いいプランだったら、お父さんがお金を出してあげ
るからね」と言われているようなもの。いいプランが思いついたから、僕に
お金を頂戴と親に手を出す息子の行為が、大学生の財政的自立になるという
なら、その根拠を教えて欲しい。

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> [編集後記] <

 親は「自立しなさい」と口では言うものの、大学を卒業した子供にも、い
ろいろと世話を焼きたがる。やはり、放っておけないのが親心なのでしょう
か?

 しかし、その「親心」が、本来は大人になるべき子供たちの「生きる力」
を削いでいると感じています。国と自治体との関係も、似たようなものかも
知れませんね。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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