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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/4/14
http://www.asanoshiro.org/                  第136号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「桜に想う」(浅野史郎)

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> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「桜に想う」(浅野史郎)

 イラクでの日本人人質事件、年金改正をめぐる混乱など、積極的に書きた
いとは思えない話題が多い。毎週欠かさずメルマガを書くことのつらさを、
こんな時に実感する。そこで、今回は、少しばかり心和む話題を書きたく
なった。仙台地方は、時あたかも、桜が満開の季節を迎えている。わがまま
をお許しいただきたい。

 「花の季節」と聞いてチューリップやバラのことだと思う人は、日本人で
はまずいないでしょう。黙って「花」と言えば、日本では桜のことである。
三ヶ月に2回ぐらいの感じで連句の会に出ているが、そこで「花の座」と捌
きに指定されれば、桜の句を読まなければならない。

 私の好きなもの。桜、そして富士山。だから、一年のうちでも、花の時期
である今頃は、心騒がずにはいられない。「世の中に 絶えて桜のなかりせ
ば 春の心はのどけからまし」(在原業平)の心境である。仙台地方は4月
7日に開花宣言が出たと思ったら、我が家から走って2分の澱橋のたもとに
ある大きな桜が、翌日にははっとするほどの咲き具合になっていた。その翌
日は、市内全域の桜がほぼ満開のにぎわいである。まさに、「世の中は三日
見ぬ間の桜かな」そのもの。

 この時期に、宮城県庁の幹部が集まる会議があって、そこでの訓示、挨拶
でも「三日見ぬ間の桜かな」を何度も繰り返すことになった。4月1日に辞
令をもらったばかりの職員でも、3日たてば、新しいポストで獅子奮迅の活
躍をしていることになぞらえた積もりなのだが、メッセージが伝わったかど
うか。

 「散桜 残る桜も ちる桜」も好きな句のひとつ。これも、前述の会議で
繰り返した。散る桜を退職する職員に見立てた。残っている職員もいずれは
退職するのだから、職にある間はせいぜい咲き誇って欲しいという思いなの
だが、これもうまく伝えられたかどうか。

 ということで、桜の花は、人生に譬えたり、日本人の心情と重ね合わせた
り、引用されることが多い。その代表例が、「敷島の 大和心を人問はば 
朝日に匂う 山櫻花」(本居宣長)。日本にとって歴史上不幸な時期に、こ
の歌が、ぱっと咲いてぱっと散るのが大和魂だ、武士道は桜のように潔く散
ることと見つけたりといったように解釈されたりしたものである。しかし、
本居宣長にとっては迷惑な話である。大和心というのは、山桜の美しさを素
直に受け入れる心情であると言いたかったのに、戦争における心構えに利用
されてしまった。

 4月10日(土)に、仙台市内で「三位一体改革推進列島縦断シンポジウ
ム」が開催された。お隣り岩手県の増田知事もパネラーとして参加したのだ
が、仙台が桜満開になっているのに驚いていた。盛岡地方の開花予想は4月
18日で、花見はまだまだという感じなのだそうである。東京からお迎えし
たゲストにとっては、二度目の花見ということになる。まさに、列島縦断シ
ンポジウムの名にふさわしい。日本列島は南北に長いし、季節のありようも
地域によって随分違いがあることを実感する。

 桜の開花、花見の時期をとっても、こんなにも違う。全国一律、全国一斉
にというわけにはまいらない。三位一体改革、いや違う、地方財政自立改革
を必要とする理由が、このことからも理解することができる。

 そんな無粋な物言いは横に置いておいて、純粋に花を愛でたいと思う。
「願はくは 花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月のころ」(西行)、
「あしびきの 山のまてらす桜花 この春雨に 散りぬらむかも」(万葉
集)、「見渡せば 柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける」。桜の盛りは、
4,5日しかないというのが切ない。だからこそ、なおのこと今が盛りの桜
を愛でたいという気持ちになる。「花の色は 移りにけりな いたづらに 
わが身よにふる ながめせしまに」(小野小町)。読み人が、小野小町だか
らこそ、この想いは痛切なものに聞こえる。
 「花はさかりに 月はくまなきをのみ見るものかは」(兼好法師)という のも味わい深い。日本人としてというか、粋人としてのモノの見方の教えで ある。つまりは、桜の愛で方にはいろいろあるということ。愛で方というよ り、桜の咲きよう、散りようを見て、いろいろなことを深く深く考える。そ ういう態度こそが、日本人の日本人たるゆえんなのである。散り際を潔くと いう、大和魂の短絡的な解釈に堕することなく、人生のありように想いを致 すこと。飲めや歌えの花見の喧騒も悪くない。しかし、それだけで終わって しまうのでは、日本人に与えられた特権としての花の時期の過ごし方として は、もったいないではないか。  今年見た桜、来年はどういう想いで愛でることになるのだろうか。そもそ も、桜を見ることができるのであろうか。人生一度限りということが、こと のほか胸に迫ってくる季節でもある。 ____________________________________________________________________ > [読者のみなさんから] <   ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。  当メルマガには、皆さんからたくさんのご感想をいただいております。そ の皆さんの声の一部を掲載しております。  <ペンネーム:りんごワインさまから>  親から仕送りを受けている息子にたとえての説明はとてもよくわかりまし た。ああ、本質はこういうことなのかとストンと入って来ました。  ニュースでも何度も聞いていることなのに、サッパリ頭に入らなかったん です。言葉だけが一人歩きして、解ったような解らないような、結局解らず しまい・・・でした。  そうこうしている内に、ドンドン進められて、そのつけを引受けさせられ てしまうのですね。  国民や県民や市民にわかってもらうためには、その本質を日常のよくある ことにたとえて話してくれる人が本当にいっぱいいて欲しいです。 でも、そうすると困る人もいるのかしら・・・。  本日は、お一人の感想を掲載いたしました。ご意見、ありがとうございま した。 ※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま  す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、  投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの  掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。  ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  登録ページはこちらです。  http://www.asanoshiro.org/news/mmz.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  一日発行が遅れてしまいました。申し訳ございません。決して、花見をし ていたために、発行し忘れたとは・・・。  それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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