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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/4/21
http://www.asanoshiro.org/                  第137号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「イラク戦争と日本の立場」(浅野史郎)

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 ○「イラク戦争と日本の立場」(浅野史郎)

 イラクで人質になっていた3人が解放された。自衛隊を撤退させなければ
3人の人質は殺すというのが、誘拐側からの最初のメッセージだった。この
件については、定例記者会見で聞かれて、私は「人質解放と引き換えという
条件に乗って、自衛隊撤退をする理由はない」と申し上げた。テロに屈した
形で自衛隊を撤退させることなどは、愚の骨頂であるからである。ただ、そ
のことと切り離した上で、イラク情勢の新しい展開の中で、自衛隊派遣を含
め、日本がどのような行動をとるべきかの問題は残る。

 「イラク情勢の新しい展開」と書いた。確かに、イラク情勢は、当初、想
定していたのとは相当にかけ離れた状況になっている。「想定した」の主語
はアメリカである。想定していたというよりも、希望、期待していたと言う
べきか。いずれにしても、「こんなはずではなかった」という状況であるこ
とは、否めない。

 そういった展開の中で、数々の「禁じ手」(寺島実郎氏の言葉)が打たれ
ている。アメリカ単独での武力行使も、大きい意味では禁じ手であろうが、
もっと具体的な禁じ手としては、アメリカ軍によるモスク攻撃がある。大量
破壊兵器をなくす、イラクに民主主義をもたらすといった大義名分からも、
この戦いに宗教を巻き込むことは絶対にやってはならないことだったはずで
ある。イスラムの聖なる場所であるモスクを攻撃することによって、この戦
いをイラク側から見ての聖戦にしてしまう契機になる。宗派間、部族間で対
立していた図式が、この攻撃でイラク側が一つにまとまることにつながって
しまう。

 一方のイラク側においての禁じ手が、今回の日本人誘拐もそうであるが、
民間人を巻き込む無差別攻撃である。これでは、世界全体を相手に回すこと
になってしまう。アメリカの民間人を殺して、見せしめ的な残虐扱いをする
のも、禁じ手と言える。アメリカ国内に良識的な動きが出てくることさえ、
封じ込めることになるであろう。

 といった具合に、双方ともに、禁じ手を打ち合っている図式へと発展して
しまった。特に、アメリカ側が打っている禁じ手が重要である。こんなこと
を繰り返すことによって、自らの手でイラク攻撃の大義を否定していること
になる。また、こういった禁じ手を打たざるを得ないほど、アメリカとして
は追い詰められている状況と見ることができる。9.11の流血に触発され
た復讐、殺気で、アメリカ国民全体が狂気の中に突入していったが、事態は
予想外の方向に展開している。その中で、自信喪失、思考停止、状況への嫌
気を感じている層と、さらにイラクへの攻撃を強化せよというイケイケ派の
層とにアメリカの国論が二分されている状態になってしまった。

 こういった状況の中で、日本はどうすべきか、改めて真剣に考えるべき時
期である。イラク攻撃開始の頃には、「日本としてアメリカに従うしかない
ではないか」という「政治的現実主義」(これも、寺島実郎氏の言葉)が支
配的であった。状況を分析し、日本の立場を考え抜いた末の決断というより
は、狭い選択肢の中から行動を決めてしまったというほうが、真実に近いの
ではないか。

 国と国の関係を人間同士の関係にそのまま当てはめるわけにはいかないが、
アメリカにとって日本が良き友人たらんとした場合に、いかなる行動をとり
得たのかを考えることは、今となっても決して無駄なことではない。友人の
思いを自分の思いとして受け止め、即座に行動を共にするというのも、友情
の発露かもしれない。しかし、それとは別に、友人たるアメリカが9.11
同時多発テロで平常心を失いかけて、「イラク討つべし」という心情に傾き
かけた時に、「ちょっとだけ立ち止まって、周りを見渡してよく考えたらど
うか」と声を掛けるのも、本当の友情だったのかもしれない。

 自衛隊のイラク派遣は、人道援助として、それ自体は決して非難されるべ
き行動ではない。しかしながら、派遣に至る契機としては、アメリカ側から
の「態度で示せ」という働きかけと無縁であったとは思われない。我々の真
意は別なところにあったとしても、他の国から、なかんずくイラクの武装勢
力からは、アメリカの言いなりになって行動した日本の象徴として見られて
いることは否定できない。

 解放された3人の人質の「無謀な」行動が、非難の的になっている。元閣
僚の発言の中には、「遊泳禁止の札が立っているのに、泳ぎに行ったような
もの」というものもあった。遊泳禁止をしなければならないほどの治安の悪
化であれば、戦闘状態に近い。自衛隊派遣の際の説明と、ちょっと違ってき
たのではないか。もちろん、丸腰、訓練なしの民間人3人とは違って、装備
も訓練も組織も備わっている自衛隊は、ちょっとやそっとの治安悪化にはび
くともしないのだろうが、状況が当初とは違ってきたことは認めざるを得な
いだろう。

 「無謀な」3人の元人質には、イラクの状況が落ち着いてからまたでかけ
てもいいではないかという意見もあった。治安悪化の中での人道支援という
点では、彼らと自衛隊の役割は同様である。だったら、イラクの状況が落ち
着いてから、改めて人道支援に自衛隊が出ていくことはありなのではないだ
ろうか。

 新しい状況の展開を前にして、改めて日本はどういった行動をとるべきか。
私ごときが示せるものではないが、ここは一番、じっくりと考え尽くすこと
が大事なのではないかということだけは言える。これまでの延長線上だけで
物事を考えていいのか。今こそが、その大事な時点であるということを強く
感じる。

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> [読者のみなさんから] < 

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 当メルマガには、皆さんからたくさんのご感想をいただいております。そ
の皆さんの声の一部を掲載しております。


 <ペンネーム:ゴーゴー仙台さまから>

 毎週、浅野知事のメルマガ読ませてもらっています。埼玉に住んでいます
が、浅野知事との出会いは(大袈裟ですが)生島ヒロシさんのラジオの時々
出ている時から気になっていました。

 浅野知事の日記の中でよくベガルタ仙台が勝った、負けたという記述があ
りますね。以前から自分も、宮城県は好きな県でしたが、その影響か先日4
月17日の埼玉大宮で行なわれたベガルタ仙台戦を観戦に行きました。

 普段から大宮アルディージャ戦を見に行くのですが、当日は観客が普段の
3倍。多くのサポーターが仙台から応援にきていました。

 試合開始前からゴール裏はベガルタカラーに染まり。老若男女の人がユニ
フォームを着て応援していました。それに、応援コールも素晴らしく、数多
くの試合を見てきましたがナンバー1の応援風景でした。

 残念ながら負けてしまいましたが、うつむいている選手にサポーターが顔
をあげろや大きな拍手をしていたのが印象に残りました。試合終了後、私も
ベガルタの虜になってしましました。

 浅野知事、これからも宮城県知事として成績不振のベガルタ仙台を支えて
ください。あの数多くのサポーターのためにも。



 本日は、お一人の感想を掲載いたしました。ご意見、ありがとうございま
した。


※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま
 す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、
 投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの
 掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。

 ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで

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> [編集後記] <

 二週連続の一日遅れとなってしまいました。みなさまには、ご迷惑をおか
けいたしました。申し訳ございません。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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