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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/6/8
http://www.asanoshiro.org/                  第144号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「地方財政自立改革第2幕」(浅野史郎)

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 ○「地方財政自立改革第2幕」(浅野史郎)

 政府は、6月3日の経済財政諮問会議で、「経済財政運営と構造改革に関
する基本方針(骨太の方針第4弾)」を取りまとめ、小泉純一郎首相に答申
した。地方財政自立改革(三位一体改革)は、4項目目に登場している。そ
の骨子は、2006年度までの三位一体改革全体像を秋に提示、税源移譲は
3兆円規模を目指す、自治体には、補助金改革の具体案を要請するというも
のである。

 これに対するコメントを求められたので、私としては、税源移譲3兆円の
明記は評価できる、補助金・負担金の廃止リストの提示をはじめ、これから
は地方の出番であるという趣旨のことを申し上げておいた。税源移譲が先だ、
補助金廃止が先だという、総務省対財務省の争いに機先を制する形で、「税
源移譲3兆円」という目標を掲げたのは、小泉首相のリーダーシップであり、
この点は高く評価できる。問題は、これからどうするかである。第2幕にお
いては、何が論点になるのか、この時点でしっかりと確認しておく必要があ
る。

 税源移譲3兆円という目標が示されたからといって、手放しで喜んではい
られない。財務省の思惑と、我々の地方の考え方とは、大きな隔たりがある
からである。財務省は、補助金・負担金の廃止リストを出せと地方に迫るだ
ろう。そのリストを見て、「こんな補助金は、奨励的に出ているものだから、
地方としてはやってもやらなくともいい事業である。だから、こんな補助金
を廃止しても、それに見合う税源なんか移譲できない」と反応する可能性大
である。「こんな補助金」と言われないで済むのは、義務教育費国庫負担金
とか、生活保護負担金である。義務教育や生活保護は、どこの地域でも実施
しなければならない。だから、負担金を廃止したらそれに見合う税源は移譲
してあげましょうということになる。

 この考えは、我々地方側とは、真っ向からぶつかる。地方として真っ先に
廃止すべき補助金は、奨励的補助金である。補助金と負担金では、まず、補
助金の廃止が先。つまりは、財務省の考えとはまるっきり反対ということに
なる。ここで、大きな闘いになるであろう。

 だから、2兆5000億円余に及ぶ義務教育費国庫負担金の扱いが、大き
な論点になるのは避けられない。全国知事会の大方の意見としては、義務教
育費国庫負担金はいずれ廃止するにしても、廃止の優先順位はずっとあとに
すべきであるというもの。平成18年度までの廃止リストには入れない。こ
の点は、総務省の思惑とも少し違う。確実な税源移譲を果すためには、義務
教育費国庫負担を廃止するのが確実であるというのが、どうも総務省の「作
戦」らしい。文部科学省は、「義務教育費国庫負担の廃止は憲法違反」との
主張まで携えての「廃止絶対反対」姿勢であるのは、当然である。三つ巴、
四つ巴の複雑な議論になる。

 ただ、この議論で一つだけ気になるのは、知事会内部にある意見で、「総
額裁量制を導入したのだから、義務教育費国庫負担は廃止リストからはずそ
う」というもの。総額裁量制の導入をそんなに高く評価するのは、まだ早い
ということだけではない。「使い勝手」をよくすれば、補助金・負担金は廃
止を免れるというメッセージとして霞が関に伝わるのは、避けるべきである。
平成16年度に関係する補助金が統合されて「まちづくり交付金」が設定さ
れた。この「テクニック」を使えば、補助金廃止は免れるという前例になっ
たのではないかと恐れている。こういった「テクニック」論にならないよう
に、我々地方側はよほど気をつけなければならない。

 地方内部の意見の食い違いが、「敵」に乗じられる隙を見せることになる
ことも、心しておかなければならない。大都市対地方、県対市町村といった
図式である。税源移譲が進めば、税源が豊かな大都市が有利になり、独自税
源に乏しい過疎地域はますます財政が苦しくなるという「うわさ」が駆け
巡っている。ここにこそ、地方交付税の財政調整機能がこれまで以上に発揮
されるべき契機があるのであって、仕組み方の問題である。「交付税は大都
市から地方に収奪されるもの」という被害意識からくる反対論には、理性的
にしっかりと反論する必要もある。

 地方交付税について、私は早くから、「『配る』から『分ける』へ」を主
張していた。地方交付税の配分権限を国に委ねたままでいては、補助金は廃
止されても、「補助金くれ」から「交付税くれ」に変わるだけになりかねな
い。そして、上記のような大都市対地方という図式に国が行司役で乗りこん
でくるということになる。それが、「地方財政自立」につながるのか。交付
税の配分の問題は、地方の中で解決するというシステムが必須なのは、この
議論から出てくる。

 交付税の問題も含めて、小異を捨てて大同につくという姿勢が求められて
いる。まずは、廃止する補助金リストの作成。思想性を持たせたリストを示
して、霞が関につきつける。各省庁からの抵抗、サボタージュが予想される
のだから、地方側もよほどしっかりとした対応をしなければならない。「闘
う知事会」は、賢く闘う知事会を目指す。これからが戦いの正念場である。

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> [編集後記] <

 行政の仕組みって、もっともっとシンプルにならないものでしょうか。単
純にそう思いませんか?
 
 ビジネスは、単純であればあるほど、お客様に喜んでいただけるのですが。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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