宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/6/15
http://www.asanoshiro.org/                  第145号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今週号のメルマガがサーバーの不調により、配信されておりませんでした。
みなさまにはご心配とご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「不可解だけではすまない―小六女児殺害事件」(浅野史郎)

 [読者のみなさんから]
  ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。

 [お知らせ]
  ○メルマガ登録者募集中です。

____________________________________________________________________
> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「不可解だけではすまない―小六女児殺害事件」(浅野史郎)

 6月1日午後、長崎県佐世保市の小学校で、六年生の怜美さんが、同級生
の女児にカッターナイフで首など数カ所を切られて殺された。学校内での事
件であることに驚かされた。さらに、殺害したのが、仲が良かった同級生の
女児であることにも慄然とする。加害女児は、警察や児童相談所に対し「イ
ンターネットの掲示板に嫌なことを書かれ、トラブルになった」と話してい
る。インターネット社会の暗部というのも、この事件のもう一つの側面であ
る。

 加害女児が、事件後も終始落ち着いた態度であったということも注目され
ている。少なくとも、精神的に錯乱状態で引き起こされたものではない。別
途、精神鑑定がなされることになっているが、どういう結果が出たとしても、
犯罪との結びつきを明確に説明することは困難であろう。なぜ加害女児が殺
害行為にまで及んだのかは、専門家の説明を聞いてもはっきりしない。不可
解さがつきまとう。

 殺された怜美さんの父親にとっては、最愛の娘を亡くしただけでも大きな
衝撃である。それに加えて、なぜ殺されたのかの理由、背景が理解できない。
混乱のただなかに置かれたままの状態になっている。

 犯行に及んだ加害女児については、わからないことだらけなので、勢いの
赴くところ、加害女児以外の「責任者出て来い」の議論が巻き起こりつつあ
る。親が悪い、学校の校長や担任は何をしていたのか、現代の教育批判、つ
まり、教育委員会、文部科学省にも責任があるなどなど。加害女児も観てい
たという「バトル・ロワイヤル」という映画が、犯行に直接的影響を与えた
のではないか。暴力を助長する映画がよくないとの指摘もある。

 加害女児の親も、実際のところ、とまどっている、理解できていないとい
うことは、周囲と同様であろう。親を責めても仕方がない面が多い。学校の
校長や担任は、責任者ではあるにしても、事件に大きな衝撃を受けて立ち上
がれないでいる。残されたクラスメイトの受けた精神的ショックは極めて大
きい。他の生徒たちも同様である。まずは、その衝撃からどうやって立ち直
らせるかが大事なことであり、それこそが校長先生、担任の先生をはじめと
する学校側の責任である。担任の先生は、あまりにも大きなショックで登校
もできない状態らしい。無理もないことではあるが、残されたクラスメイト
のためにも、ここは勇気を振り絞ってがんばってもらうことを期待したい。

 映画「バトル・ロワイヤル」については、亡くなった石井紘基衆議院議員
(2002.10.30メルマガ第60号「石井紘基議員の死」参照)が、
その有害性を国会でも取り上げていたことを思い出す。表現の自由の問題で
はあるが、誰に見せるか、見せてはいけないかというところまで踏み込んだ
議論の必要性を、改めて感じる。

 議論の必要性ということで言えば、インターネットの掲示板などが全くの
規制なしでいいのかということを、今回の事件でも改めて考えさせられてい
る。一定の個人をインターネット上の掲示板などで、匿名の書き込みにより
誹謗中傷批判する。言葉の暴力が、発言者の責任を伴わない形で振るわれる。
ただし、今回の事件で問題にすべきは、そのことではない。

 インターネット上の掲示板でやりとりされる「会話」の持つ、一種独特の
影響力のことである。書き込むほうも、面と向って発する言葉に比べて、き
びしいことを言いやすい面がある。なにしろ、相手の顔が見えないところで
発する言葉である。反応を気にすることもない。「メール」とは称しても、
それは「お手紙」の代替ではなく、その反応の即時性からいって、「会話」
の代替になっている。相手の顔が見えないだけでなく、声も聞こえない、つ まり、言ったその場での相手方の反応が返ってこない形での「会話」という、 不思議な現象が成り立っている。  書き込みを読む側の心理も独特。通常の会話は音声言語でなされるから、 言った言葉は残らない。言いっぱなし、聞きっぱなしである。ネット上では、 言った言葉は視覚的に残る。しかも、音声言語において感じられるニュアン スが省かれた、即物的な言葉である。通常の手紙の場合は、時間をおいての やりとりであるので、日常会話とは別な世界でのものというお互いの了解が ある。一方、ネット上で展開されるのは、日常会話なのに、言葉は即物的に なる。だから、悪口に近い言われ方は、受け手には実物大以上にグサリと心 に突き刺さり、いつまでも残るという特性がある。  インターネットの掲示板での「悪口」(かぎかっこにしたのは、言ったほ うはともかく、言われたほうはそう受け止めたという趣旨)は、今回の事件 の原因とは言わないまでも、引き金になったことは、加害女児も認めている。 発達段階にある少年少女にとって、インターネットを的確に使いこなすこと は、単なる技術の問題だけではない。今回思い知らされたように、インター ネットの暗部とも言える部分についても、しっかりと対処できるような知識 も、同時に与えなければバランスを欠くということも忘れてはならない。  不可解さが残る事件であるが、全容解明までいかずとも、この悲劇から抽 出される問題点の一つひとつに対しては、的確に対処していくことが求めら れる。 ____________________________________________________________________ > [読者のみなさんから] <  ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。  当メルマガには、皆さんからたくさんのご感想をいただいております。そ の皆さんの声の一部を掲載しております。  <西出さまから:“「弱者」が主張する時”について>  第143号の記事、なる程とおもいました。現在障害者の施設に働いていまし て、日々感じる事柄です。また、個人的には、大阪府内に生まれたので、同 和問題等を子供の頃から関心を持ち、日々勉強しつつ今に至っています。  「差別の問題はすべてここに帰着。あわれでかわいそうな存在時は、全面 支援。同等の主張をすると変貌。人種・男女・障害者差別では、おとなしく していれば差別しない。制限内では安泰。ひとたび自分達の権利を主張し始 めると、このアプローチの限界が露呈。世間は反発。世間には、行政も施設 関係もマスコミも含まれる。」は分かるのですが、それは誰なのでしょう。  子供の頃から感じているのですが、差別するとゆうのと、直接当事者を攻 撃するのは同じ次元の人なのでしょうか。差別する心は誰にでも有り、それ を自分で気付き少しずつ改善して行くものと思っています。毎回思うのです が当事者への攻撃は、誰か先導なりしているんかいなと思ったりもしていま す。  ただ、ものモノの流行へ流れる人々や、個性と言いながら商業主義に流さ れる世間を見ると、そうかもしれないと思う時もあります。 ※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま  す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、  投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの  掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。  ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  登録ページはこちらです。  http://www.asanoshiro.org/news/mmz.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  出したはずのメルマガが、届いていないと先ほどお電話いただき、慌てて 再送しております。サーバーのメールポストに大量のメールが引っかかり、 送信できていなかったようです。確認が行き渡らず、申し訳ありません。
 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org