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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/9/7
http://www.asanoshiro.org/                  第157号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「アテネオリンピック余談」(浅野史郎)

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 ○「アテネオリンピック余談」(浅野史郎)

 アテネオリンピックが終了してだいぶ時間が経ってしまった。あの興奮は
既に過去のものになりつつある。感動の記憶が完全に消えてしまう前に、私
としても書き残しておきたいという気になった。

 「いまさらオリンピックなんて・・・」と、冷めた見方をしていた人たち
も、いざオリンピックが始まり、早い時期に柔道の谷亮子選手、野村忠宏選
手の金メダルのニュースが飛び込んでくるや、すっかりオリンピック熱に巻
き込まれてしまった。私もその一人である。その意味では、谷、野村両選手
の功績はまことに大きい。あれで勢いがついた。アテネに陣取る選手への勇
気づけが一番であるが、我々日本に残る者の心に火をつけたという意味も大
きい。もし、あそこで金メダルを取り損ねていたとしたら、その後のメダル
ラッシュもこれほどまでは行っていなかったろう。

 一つひとつの戦績を振り返ることはしない。全く個人的感想であるが、私
にとって最も感動的で印象に残る日本人選手の活躍について書いてみたい。

 ベストワンは、もちろん野口みずき選手の女子マラソン金メダルである。
「もちろん」というのは、アテネが始まる前から最も注目し期待していた種
目であり、私自身、レベルは比べるべくもないが、同じランナーだという思
いがある。その種目で、期待どおり金メダルなのだから、感動しないはずが
ない。

 このレースは、今回のオリンピックで、私がリアルタイムで観戦した数少
ないもののひとつだったということも、感動の原因ではある。レース実況の
日は、計画的に昼寝をして、本番観戦に備えた。「最初から最後まで、絶対
見届けるぞ、途中で寝ないぞ、寝不足を仕事に持ち込まないぞ」と、気合を
入れて臨んだ。

 NHK衛星放送での放映だったから、レース途中にコマーシャルが入らない。
民放ならCMタイムにトイレに行けるのだが、そうはいかない。気ままをいっ
ちゃならない、選手だって誰も途中でトイレになど行かないのだ。だから、
いやがうえにも、見ているほうの集中力が途切れずに、手に汗を握り、夢中
になって応援した。

 国内のマラソン中継では、応援している選手でなくとも、見ている私は、
優勝選手がゴールする瞬間には涙を流してしまうのだが、今度はオリンピッ
クである。応援している野口選手である。事前に、彼女の半端でない練習ぶ
りを知らされている。アテネは上りが続く史上稀に見るきついコースである。
しかも、気温35℃とかいう、常識はずれの気象条件。レースそのものは、
画面の後ろに2位のキャサリン・ヌデレバ選手(ケニヤ)の姿が終始映し出
されるという接戦である。そこに、野口選手の小柄な身体がゴールに飛び込
んでくる。その瞬間、感動しないはずがないではないか。

 男子マラソンも、別な意味で感動した。ブラジルのデリマ選手が35キロ
まで独走態勢。テレビ画面に、暴漢が飛び出していって、とんでもない妨害
をする様子が映し出された。こんな暴挙は初めて見る。デリマ選手がかわい
そうと見る間に、二人の選手に抜かれてしまった。そのままずるずる後退す
ると思いきや、3位でゴール。最後は、サッカー王国ブラジルの選手らしく、
ゴールを決めた選手の「飛行機ポーズ」(?)を取りつつ、笑顔でのゴール
である。これに救われた思い。抗議を示すポーズをすることもありかなと
思っていたので、意外。そして、なんと爽やかな選手だろうとの感嘆。これ
で、ギリシア国民、大会関係者、警備関係者が救われたが、オリンピック全
体も救われた。

 リアルタイムで金メダル獲得の瞬間を見た種目は、個人的な感動ベストテ
ンでは上位に入る。最後にもう一つそういった種目を挙げると、水泳女子
800メートル自由形の柴田亜衣選手。戦前にはほとんど期待されていない
選手だっただけに、驚いた。800メートルという長丁場であったので、陸
上のマラソンと似たような意味でドラマがあった。あっという間に結末を迎
えるレースでなかったというのも、感動の要因である。

 こんなことを書いていけばきりがない。オリンピック全体の印象を言えば、
もちろん、日本選手の活躍は手放しでうれしいし、すごいことだと思う。因
果関係はないとは思いながら、これで日本の景気回復の力になってくれるの
ではないかといった期待すら持ってしまう。

 悪いほうのことを書けば、薬物使用、ドーピング問題である。室伏選手が
ハンマー投げで「結果的」金メダルを手にしたが、後味のなんと悪いことか。
そうまでして欲しいか金メダルという思いである。金メダル至上主義がここ
まで来ると、「参加することに意義がある」といったクーベルタン男爵の言
葉はなんだったのだろうかという怒りに駆られる。オリンピック精神という
のを、この際、真剣に思い起こさなければならないと強く思う。

 もう一つは、アマチュア精神。プロ野球選手がオリンピックに出ていると
いうのは、私には、全くなじめない。そういうことが許されるルールになっ
ているのだから、問題ないことはわかっているのだが、そういうルール自体
を見直してもいいような気がする。

 メダル至上主義、国威発揚、プロ選手の突出。こういったことを考えると、
次の北京オリンピックは、よほど真面目に取り組まないと、「オリンピッ
クってなんだろう」ということになりかねない。単なる「スポーツ・ショー」
に成り下がってはもらいたくない。戦後すぐの、まだ純真さの残っていたオ
リンピックに郷愁を感じる私の偽らざる感慨である。

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> [編集後記] <

 オリンピックが終わったら、台風だ、地震だ、津波だと、立て続けに天災
が起こっています。今現在の仙台も、台風の接近に伴い、薄暗くなってきま
した。

 宮城の稲刈りまで後もう少し。このまま直撃しないことを願うばかりです。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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