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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━  2004/12/7
http://www.asanoshiro.org/                  第170号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○しもふりレッドの活躍(浅野史郎)

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 ○しもふりレッドの活躍(浅野史郎)

 ふだんお買い物などに無縁な生活を送っている私であるので、百グラム800
円の豚肉というのが、どれほど高値なのか、実感が湧かない。通常の豚肉は、
この半分から五分の一ほどの価格らしい。だから、かなり高いことになるが、
この値段は「伊達の純粋赤豚」の香港の一流デパートでのものと聞くと、驚
きはさらに大きくなる。

 宮城県迫町新田地区の8戸の農家で生産された赤豚が、この豚肉の元であ
る。その赤豚は、宮城県の畜産試験場で系統造成された「しもふりレッド」
由来である。できたばかりの頃、私も試食させてもらった。極上の霜降りが
特徴の、とてもおいしい豚肉という印象だった。

 この赤豚を香港に持ち込んだのが、伊藤秀雄さん。伊豆沼農産を経営して
いる。その様子が、先日12月4日に私がゲスト出演したBS−i「榊原・
嶌のグローバルナビ」で紹介された。一緒に見ていた榊原英資さん、嶌信彦
さんも、「これは面白いね」という感想を漏らしていた。わが地元の人の活
躍であるので、私にとっては、「どんなもんだい」と威張りたい気持ちで
あった。

 しもふりレッド由来の赤豚の活躍は、これからの農業のあり方に、さまざ
まな示唆を与えてくれる。宮城県は、米どころ東北の中でも、農家生産額の
中で米の割合が高いところである。米偏重ともいえるほどの高率であり、昨
年の冷害や最近の米の値段の低下などを考えれば、リスク分散という意味で
も、米以外の生産に力を入れる必要がある。畜産も力がさらに入れられるべ
き分野であり、伊豆沼農産に関わる農家は、その方向でがんばっていると言
える。

 伊達の純粋赤豚の生産には、伊藤さんたちのこだわりが感じられる。特記
すべきは、安全・安心へのこだわりである。安全は当然のことである。安心
へのこだわりは、「素性のはっきりした」ということにつながる。番組のビ
デオでは、製品に生産者の名前、住所のみならず、写真も添えられているの
が目に付いた。どんな顔をした誰が作ったのかというのが、これほどはっき
りと表示されていれば、消費者は安心である。

 遺伝子組み換えでなく、収穫後は薬剤を使わずに保管したトウモロコシを
餌に使う。離乳期のごく一時期を除いては抗生物質を与えない。これも安全
へのこだわりである。紹介ビデオで出演者一同感心したのが、できた豚肉の
出荷前の試食の場面であった。3人の試食者が、一切れ一切れ試食しては
「Bです」、「Aです」とランクづけをするところでは、「へー」の声が漏
れた。一定のうまさ、風味のある豚肉だけを市場に出す。こういった品質管
理によって、赤豚のブランドが保証されることになるのだろう。

 こういった製品を香港にまで持ち込んだこともすごい。値段は、上記の如
く、とんでもなく高い。その値段で飛ぶように売れているというから、さら
にすごい。日本の農業は、海外からの安い農産品の輸入で危機に陥っている
というのが、通り相場であった。それが、逆に、海外への売り込み攻勢をか
けている。赤豚は、その成功例である。やればできるというか、いい製品で
あれば、海外でもどこでも売れるということが証明されている。

 こうやって見てきてわかることは、農業製品も工業製品も同じということ。
つまり、いいものなら売れる。売る努力をするのも、生産者の義務である。
農業において、これまであまり意識されていなかった「ビジネス」という側
面を徹底的に追求した結果ということになる。

 工業製品とちょっと違うところは、生産現場にストーリーのようなものが
あるということだろうか。伊豆沼農産の直売所は、立地条件としてはとても
交通不便なところとのこと。買い物客は、そこにわざわざ遠方からやってく
る。それが「現地」の強みということ。伊豆沼の自然があり、田園風景が広
がるところ。その現地にたたずんで、消費者は「こういうところで作られて
いるのか」という感慨にひたるのだろう。それが製品にさらなる付加価値を
与えることになるのかもしれない。

 キーワードは、「誇り」ではないだろうか。自分たちの製品に自信と誇り
を感じる農家は、自分たちの農業に誇りを覚えるはず。それは、生き方への
誇りに通じるだろう。それを見て、農業に参入しようという若い人たちが増
えてくれることも期待される。農業は現地に根ざした産業であるから、製品
への誇りは、地域への誇りにつながる。その集大成が、売れる農業、産業と
して成り立つ農業にきっとなるはずである。

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> [編集後記] <

 伊豆沼農産の伊藤さんには、何度もお会いしているのですが、「伊達の純
粋赤豚」は、まだ食べたことがありません。ひとり暮らしではなかなか豚肉
を買う機会はなく・・・。

 こうなったら、今年中に伊豆沼のレストランで「伊達の純粋赤豚」を食べ
る、と宣言します。どんなにおいしいんだろう。食べたら報告いたします。
 
 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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