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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2005/2/1
http://www.asanoshiro.org/                  第178号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○国民健康保険への県負担の導入(浅野史郎)

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 ○国民健康保険への県負担の導入(浅野史郎)

 三位一体改革の名の下に、平成17年度から開始されるのが、標記のこと
である。昨年末、この案が政府から示された時に、「これが三位一体改革と
呼べるのか」、「これで、県の裁量がどれだけ広がるのか」、「こういう案
だけは受け入れられないと、あらかじめ地方側は明記していたではないか」、
「医療保険抜本改革の議論が途中段階にある時に、唐突に出してくるのはお
かしい」、「これで税源移譲7000億円。厚生労働省で補助金廃止・税源
移譲すべしと地方が示していた45項目の施策が、これで肩代わりされてし
まった」などなど、批判の対象になった案である。

 そういった批判をしたのは、主として私ではあるのだが、それにしても、
この案の出され方には、納得できない思いが残る。国から地方への税源移譲
の額は、3兆円と約束されていた。今回政府から示されたのは、実質的には、
約1兆7千億円でしかない。そのうち、8500億円の義務教育費国庫負担
金の部分は、内容が固まっていない。となると、国民健康保険の分約7000
億円は、残りの大部分を占めることになる。とてつもない割合である。

 三位一体改革(地方財政自立改革)の第一幕は、これで一応の決着という
ことなので、幕が降りたあとに、ごちゃごちゃ言うのは、いい加減にしたい
とは思う。これからは、国民健康保険に県負担を導入することは、具体的に
どういうことなのかという議論にかかっていかなければならない。その議論
においても、きっちりと筋を通さざるべからずと思っている。

 新たに県負担とされたのが、調整交付金の部分である。これまでは、国民
健康保険の給付費総額の10%にあたる金額が、国から市町村に対する調整
交付金という形で出されていた。国からの調整交付金は残るが、これが10%
から9%になる。新たに、県から市町村への調整交付金が創設されるが、こ
の部分が給付費の7%(平成17年度は経過措置として5%)にあたる。

 県から市町村への調整交付金は、今回初めて導入されたので、どういった
基準で市町村に交付するかは決まっていない。早い時期にガイドラインは決
めなければならないとされているが、果して、どういった考え方でやるか。
これが、大きな問題である。

 「大きな問題」と書いたが、私としては、その重要性を厚生労働省も正し
く理解していないのではないかとの疑問を持っている。「国からの調整交付
金」と表現しているときの「国」は、国民健康保険を運営している立場とし
ての国である。国民健康保険財政の赤字を最小限にしたいという思いが強い
ので、医療費の抑制に強い関心を示している。一方、「県からの調整交付金」
と言われるときの「県」は、国民健康保険の運営に関わっているだけでなく、
県民の福祉の向上にも大きな関心と責任を有している主体である。

 具体例を挙げよう。A町が乳幼児医療の医療費助成制度を現物給付という
形でできるように国民健康保険を「改善」すると、国からA町に交付される
調整交付金の算定上は、「ペナルティ」が課されるという運用になっている。
その理由は、以下のとおりである。つまり、医療費の償還払いという形だと、
患者側は一旦自己負担分を現金で払って、そののちにA町からその分が償還
されることになる。「一旦払う」という行為が入ることによって、受診を控
える患者が増えると経験上言われている。逆に言うと、現物給付では、「気
楽に」受診することになるので、結果的には、償還払いの場合と比べて、こ
れも経験上、国民健康保険の医療費は多くなると言われている。

 「医療費を抑制しよう」と強く考えている(国民健康保険を運営する立場
の)国(厚生労働省)にとっては、調整交付金を上に書いたような形でイン
センティブ(又は、ディスインセンティブ)として使うのは、合目的的な行
動である。しかし、県は違った哲学によって動いていることを見過ごしては ならない。県は、国民健康保険の運営だけをやっているのではない。障害者 福祉、少子高齢化対策もやっている。乳幼児医療の助成は、少子化対策、児 童の健全育成という、県にとって重要な施策の一環である。この文脈の上で は、乳幼児医療の助成を現物給付の形でやるA町のほうが、償還払いのB町 よりも望ましい存在である。したがって、県からの調整交付金のガイドライ ンとしては、A町により多く配分されるような算定になってしかるべきであ る。これは、これまでの国の算定方法と正反対になってしまう。  「それはおかしい」と国(厚生労働省)が思うとしたら、問題の所在を正 しく認識していないと言わざるを得ない。今回の「国民健康保険への県負担 の導入」が、三位一体改革の一環としてなされたという歴史的事実を見据え る必要がある。お題目どおり、「県の裁量を広げる」というのなら、当然に、 県は県としての哲学にのっとって判断をすることを認めなければならない。  三位一体改革とは何か、それを考える一つの応用問題として、今回の国民 健康保険への県負担の導入がある。導入の経緯を度外視して、その後の運用 を考えることは許されないことを、この時点で確認しておくことが重要であ る。  今回は、ものすごく専門的で、非一般的で、わかりにくい内容になってし まった。ごめんなさい。 ____________________________________________________________________ > [読者のみなさんから] <  ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。  <倉島さまから “楽天イーグルス、いざ出陣”について>  ゴールデンイーグルスの羽ばたきを待つ  いよいよ『楽天イーグルス」の誕生に東北、なかんずく仙台市民の期待は いかばかりか。  昨年6月の近鉄破綻からの球団経営側の『ファン無視」と、それに抵抗し た選手会のストライキ、それを応援しつ付けた大勢のファンの力が今日の楽 天イーグルスを誕生させた。  この上は全力疾走する選手の姿が東北のファンを引きつけ、球団の力を高 めいつかは優勝争いをする事を期待したい。 ※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま  す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、  投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの  掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。  ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  登録ページはこちらです。  http://www.asanoshiro.org/news/mmz.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  今日は、この冬一番の寒さです。私の家ではストーブが一台しかないため、 全力でうなりを上げて部屋を暖めています。    それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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