浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

日経ビジネス2001年6月4日号 p5〜p6から転載
《時流超流》
小泉純一郎首相、答えてくれ
知事2人が激白
「構造改革にこの論点が抜けている」
から

地方交付税の役割が歪んでいる
税財源の地方委譲も進まず

 道路特定財源が予算の硬直化を招く という指摘はその通りだ。予算を柔軟 に運用するためには、特定財源はない 方がよく、今後20年も30年も維持し ていいわけではない。ただ、目的税な のだから、税を負担している人の意向 を考えなくてはいけない。一般財源化 するならば、当然、その分は税金を少 なくするという議論 になる。国会で法律 改正をすればよいと いう議論もあるが、 税の論理から言えば極めておかしい。

  東北地方では基幹的な道路さえも、 まだ整備されていない。宮城県で言え ば、県を縦貫する高速道路は東北自動 車道しかない。東京につながる高速道 路として、もう1つ、太平洋沿いに三 陸縦貫道が必要と考えるが、石巻から 北がまだ整備されていない。今は、仙 台から気仙沼まで一般道路で2時間30 分もかかる。これでは、やはり生活の 面でも物流の面でも大変に不便だ。

  非常におかしいと思うのは、東京発 の考え方では、「うち(都市部)は終 わったから(もういい)」となること 市基盤の整備は都市部 が先行してきた。最初 に完成した高速道路は、名神や東名だ。 今は、第2東名を建設するとか言って いる。こちらは「第2」どころか、1 本目の高速道路さえ完成していない。 まるで、こちらがようやく料理を食 べようという時に、「うち(都市部) は早く食べ終わったから、食事の会費 はほかのものに使おう。今度はエンタ ーテインメントのために使おう」と言 っているようなものだ。

  マスコミの論調で気になるのは、東 京発の視点ばかりであることだ。2年 ほど前、当時の建設省東北地方建設局 長が公共業の記事に関して調べたこ とがある。すると、東京発の記事の大半は「公共事業をやめるべきだ」と書 かれていたのに対して、地方発では比率が逆転していた。大都市、中でも東京が偏重されて世論形成される状況を 危惧している。

  私も記者会見で「地方エゴ」との指 摘を受けた。しかし、私から言わせれ ば都市部の意見は「都会エゴ」に感 じる。確かに都会エゴと地方エゴがぶ つかっている問題かもしれない。

  もう1つ言えば、議論の最中に悪役 が出てくる一のも、話をおかしくしてい る。例えぱ、'自民党の道路族議員や建 設業者のことだ。道路権益を皆で享受 しているとか、一極端に言えば、不正があるとかという話になる。それと道路 特定財源の問題はどう関わるのか。ち ょっと考えてみれば、それぞれ独立し た問題であることが分かるはずだ。

  地方交付税の議論については、本来 自由に使えるはずの交付税が、(使途 を制限された)第2補助金のようにな っているのが問題だ。交付税の役割は 財政調整にあるのに、特定の事業に対 するインセンティブとして利用されて いる。県税収入分を増やし、交付税の役割を財政調整に特化すべきだ。具体 的に言えば、消費税のうち地方に振り 向けられる分を現在の1%から2%に 引き上げるといったような話だ。

  小泉首相は「来年度の国債発行額を 30兆円以下に抑える」と言う。その うえで、「これは切れない、あれは切 れない、それならばこれ(地方)だ」 と言うのならば、理屈とは言えない。 いろいろな意味で稚拙な議論だ。「カ ネがないから削らなければならない。 削るにはここしかない」と言われても 納得できない。もうちょっと質の高い 議論をしてほしい。国と地方の財源配 分の仕組み全体を議論すべきだ。


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