浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

「一冊の本」 2001年7月号 朝日新聞社
特集《知事の読書》から浅野知事のアンケート回答

知事の読書

以下は全国都道府県知事に依頼した読書アンケートの回答です。
質問は、@日本の政治家が読むぺき一冊、
      A子どもたちに読ませたい一冊、
      B最近読んだ本で人に 薦めたいと思った一冊の三項目。
できれぱその理由を 合計八百字程度にまとめていただくようお願いしました。


浅野史郎(宮城県知事)
@『「正義の経済学」ふたたぴ―日本再 再生の基軸』寺島実郎著/日本経済新聞杜
A『漁師さんの森づくり―森は海の恋 人』畠山重篤著/講談杜
B『壬生義士伝』(上・下)浅田次郎著/ 文藝春秋

 寺島実郎さんは、現代日本の最高最良の論客である。「政治とは不条理を正すことにある」と言う彼には、IT革命と市場経済の猛威によって不条理が広がることががまんできない。正義に立脚しない経済学は存在に値しないという言い方は、一種のロマンであろう。政治には、そういったロマンも必要である。日本再生の道は、正義の経済学を求める延長線上に開けて行く。時代を読む目というのはこういったことなのかと、寺島さんの本の前ではいつものことながら粛然とさせられる。

  『漁師さんの森づくり』は、宮城県唐桑町の舞根湾で働く現役の漁師が子ども向きに書いたわかりやすい本。漢字にはフリ仮名が付してあるし、語り口もやさしいので、小学校低学年でも十分読める。 畠山さんの案内によって、子ども達は自然の仕組みの神秘に引き込まれていくだろう。カキの養殖という仕事を通しての自然保護論なので、単なる「科学的な」 論考よりも説得力がある。同じ著者の『リアスの海辺から」(文藝春秋)はもう少し上の年代向きだが、これは文学的な感動さえ伴う名著である。

 『壬生義士伝』は、ドラマ性では同じ作者の『蒼穹の昴』に及ぱないが、文学的成度は高い。人物が生き生きとしてい。奥州盛岡の情景が目に浮かぶ。作者の方言の使い方の巧みさにも驚かされる。 音楽的な感興さえ呼び起こす。読み進むうちに、東北の地に生まれ住むことに誇りを感じさせてくれる。東北地方の高校生必読の書にしてもいい。

 「最近の読書」と問われれば、『模倣犯』 (宮部みゆき著/小学館)を挙げるべきかもしれない。いつもながらの語り口のうまさと、緻密な筋立てには感心してしま う。しかし、こちらはすでにベストセラーであるので、あえて私が言わなくてもいい。少し古くなったが、あえて『壬生 義士伝』を薦める。


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