浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

月刊ガバナンス平成13年9月号
特集・軋みを乗り越えるか!?地方税財源問題
《これでいいのか現場からの直言!》から転載


「つまみ食いは許さない」

 小泉内閣から「地方交付税1兆円削減」方針が示されたとき、地方は色めき立った。「そんな無茶な…」との反応が多くの知事から寄せられた。しかし、真意は削減にあるのではなく、税財源の地方への移譲が必要という説明を聞くに及ぴ、「納得」ということになった。

 私は納得である、6月14目の地方分権推進委員会の最終報告で示されているように, 国税から地方税への税濠移譲を前提に、補助金の抜本的整理、地方交付税の縮小がな されるのは理解できる。地方の自立・活性化のために、国は国でしかできないことに仕事を限定するという哲学が感じられるので、極めて望ましい改革の方向が示されたと思っている。あとは、この方向に沿って、どれだけのスピードで確実に実行するかが課題である。

 一方で、懸念もなくはない。あとに続いた経済財政諮問会議の「骨太の方針」では、 地方への税源の移譲が将来の検討課題とされていることが、とても気になる。地方の自立・活性化という哲学が背景に退き、国の財政再建が前面に出ている。

  7月の全国知事会議の分科会で、この問題に関する議論をした。たまたま私が座長を 務めたのだが、アピール文にあえて「つまみ食いは許さない」の文章を追加した。つ まり、国として、地方交付税の縮減の部分だけ先行させて、税源の地方への移譲は「追って検討」では困るという趣旨である。

  同じ分科会では「地方の立場から」という常套句はやめようということも共通認識となった。地方にとっての損得の観点からの意見と受け取られるのは、本意でない。オールジャパンの観点から、税金をどう効 率的に使うか、地方の活性化をどう図るか。その目的達成のために欠かせないシステム づくりの議論であるべきだ。

  次の一手は何か。私は役割の終えた補助金の廃止だと思う。全国知事会の手で、たった一つでも補助金の廃止をさせたことはあっただろうか。小さな一歩から、大きな改革への道筋がついていくものと信ずる。


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