浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

厚生福祉 2001年9月5日号から

「介護保険制度の見直し」

 介護保険が始まって一年半が経つ。制度発足の時から、五年後の見直しというのが組み込まれているが、五年待つ必要はない。準備が整ったところからどんどん直すべきだろう。保険料の見直しに結びつく部分は、簡単には改正できないと言われるが、明らかな矛盾や運用上の大きな問題点は、早急に改善したほうが制度の信頼に結びつく。

 家事援助と身体介護の報酬の大きな差異は、早急に手をつけるべきだろう。私は、差を設けないのが正解ではないかと思っているのだが、この辺は実態に応じた柔軟な見直しが望まれる。

 どうやって改正するのかの手順であるが、中央集権ではなく、地方分権的な方法を採用すべきである。制度の実態は、実施の最前線である市町村なり県のほうが本省よりよく知っているということもある。もう一つ、リスク分散の意味もある。

 リスク分散とは、いろいろな方式を並存させて、やってみた上で最善の案を採用すればいいということである。運用における宮城県方式を認める。山形県方式は、またこれと違う内容での運用になる。どちらのやり方がうまくいくか、比較できる。中央で「えいやっ」と決めてしまってから、「やっぱり具合悪かった」では、リスクが高過ぎる。

 介護保険のいいところは、消費者がサービスを選択できるというところにある。サービス提供者が単数しかなくて、事実上選択の余地がないという地域も少なくない。サービスエリアを広域化して、消費者の選択の余地を広げなければ、サービス内容の改善につながらない。

 さらに、消費者がちゃんと選べるように、サービス提供者に関する適切な情報を提供することが必要である。これこそ、行政の重要な仕事である。宮城県では、グループホームの運営に関しては、実施にあたる事業者のチェックポイントを定め、定期的なチェック体制も整えている。

 制度が始まって、それぞれの地域で、こういった創意工夫はなされているのである。介護保険の見直しは、地方の取組みの成果を生かす形でやるべきだという理由のひとつでもある。

 せっかくできた制度、よりよいものにする努力を、関係者みんなでやっていきたい。それも、早くやりたい。時は熟しつつある。


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org