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信濃毎日新聞 2002年8月20日
審判再び
知事を考える 上

 県会の知事不信任決議、知事の失職選択
という異例の事態を受けた9月1日投開票の
出直し知事選。「県政の混乱」がさまざまな形で
メディアに取り上げられ、選挙の「ワイドショー化」
の指摘もある。そんな中で、有権者は、各候補の
政策や政治手法の違いをどう冷静に見極めて
いけばよいのだろうか。考えるきっかけの一つとして、
知事と県議会の関係、公共事業見直しのあり方、
メディア政治の3テーマで、他県知事や政治学者、
ジャーナリストら6人に語ってもらう。

県会との関係
個別案件「是々非々」で

―ともに県民の代表である知事と県議会の関係はどうあるべきか。
 「『是々非々』だろう。ただ、実際は大半が『是是是是』。逆に『とにかく知事には反対』の場合もある。ともに本来の姿ではない。大事なのは『個別の案件での是々非々』だ」

― 一昨年、警察の裁量権を制限する情報公開条例訂正案の審議で議会と激しくぶつかったが。
 「あれでよかったと思っている。原案が否決され、県議会が可決した修正案については知事の再議権を行使して拒否したため、最終的にどちらの案も通らなかったが、衆人環視の下で議論をぶつけ合えた。それは、県議会がきちんと機能しているということでもある」

―県議と知事の「民意のねじれ」についてどう考えるか。
 「選挙結果はそれぞれの瞬間の民意だから『民意を表している、いない』と言い合っても仕方ない。どこかで割り切らないと民主主義は回らない。それはそれとして尊重しつつ、知恵と力を駆使して渡り合うしかない。忘れてはいけないのは、選挙にも多額の税金がかかっているということだ。知事も県議もそれに見合った対応をしなくては、県民に申し訳が立たないだろう。少なくとも、互いを最初から敵視するような行動様式は変えていかないと。

―議会と感情的対立を避けるために心掛けていることは。
 「私の最初と2回目の知事選は、政党相乗りの対立候補が出た。議会側はいまだに私のことを『気に入らない』と思っているだろうし、ラグビーのノーサイドのようにすっきりとはいかない。しかし、それでも、長野のような対立には至らなかった。特別な努力はしなくても節度を持って常識的にやっていれば、相手も常識はずれなことはできないと思うのだが」

―県政に民意を反映させるためにどんな工夫をしているか。
 「情報公開を進め、住民に徹底的に説明するようにしている。7月下旬にはダム事業の休止について、直接地元で住民に説明した。質問が出尽くすまで逃げないという気持ちで、どうしてすぐにダムが造れないか4時間かけて議論した。
 行政情報が住民に知らされなければ、政策に民意は反映されない。知事への手紙や住民集会も開いているが、そこで出た意見が民意のすべてではない。拾い集めた部分部分を勝手につなぎ合わせて全体を考えると、間違ってしまう。行政側が意識して情報を出していかなければ。小さなことだが、県が何にどのくらい費用をかけているかが分かるよう、4月からイベントの費用や道路の1メートル当たり工事単価などをその場に掲示している。県民が県政について考える契機として、いろいろな仕掛けも必要だ」


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