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厚生福祉 2006年4月21日


児童手当法の改正


 平成18年度から施行される児童手当法の改正によって、支給対象の上限は小学校3年生から6年生に延長される。それはそれで改善であり、いいことではあるとしても、同時に児童手当の国庫負担割合の引き下げがなされていることの問題点は、決して看過されてはならない。

 国庫負担の引下げは、「三位一体改革の一環として」と説明されている。この引下げが、どうして地方の裁量権の拡大につながるのか。児童手当の受給権は児童の数と年齢によって自動的に決まる。児童手当の濫給などということはあり得ない制度であるから、「裁量」の入る余地がない。

 そもそも、三位一体改革は補助金・負担金を伴う制度の廃止をするものであり、単なる補助率・負担率の引下げは地方の裁量を増やすことにつながらず、三位一体改革とは無縁であるので、やってはならないと、地方側としては主張していた。今回の児童手当の国庫負担率の引下げによって生み出された財源は1578億円。これによって、地方側が作成した廃止リスト中の何十もの補助金つき施策が、廃止を免れた。

 国庫負担率の大幅引下げによって、児童手当制度の根幹が変わる。今までの国2、地方1の負担割合が逆転して、国1、地方2になる。今回の改正には支給内容の改善を含んでいるが、その改正内容については、地方側は相談に与かっていない。国の負担は地方の半分になったにもかかわらず、国の一方的な発議により制度改善をしてしまった。たとえて言えば、地方の二倍の割り勘を払うのだから、どの食堂で何を食べるのかは国が決めても文句は言えなかったが、今度は今までより値段の高い店に行くことだけ国が決めて、割り勘は地方が二倍払うことになる。これは、相当に理不尽なことではあるまいか。

 同様に、児童扶養手当法の改正も行われた。こちらは、4分の3であった国の負担率が一気に3分の1に下がった。事前の地方の了解なしでの改正である。三位一体改革をこういうふうな形で乗りきろうということに、全くの無理がある。そういう無理を根っこにおいて、制度をいじくるのは、制度にとっても不幸なことである。子育てだけでなく、制度育ても大事なことなのだから。


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