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2014年10月17日
自治日報
《自治

執筆原稿から

地方創生は誰の仕事?

 地方創生は安倍政権の最重要課題らしい。「実力者」石破茂氏を担当大臣に据え、安倍首相自身が「まち・ひと・しごと創生本部」の本部長を務める。その第一回会合では、本部長として、具体的な発言をしている。ここでは、その発言を引用しながら、私なりのコメントを付してみたい。

 「豊かで明るく元気な地方の創生は、安倍内閣の最重要課題です」  

 地方創生を是非とも実現したいのは、地方自身である。特に、「消滅可能性自治体」と名指しをされた896自治体は必死である。地方創生を担うのは地方自治体であり、自治体自身が汗をかき、知恵を出し、金も出して実現するものである。国は、必要以上に張り切らないほうがいい。自治体が国に頼ってしまっては、地方創生などできるはずがない。

  「景気回復の波を全国隅々にまで届けなければなりません」  

 これは「アベノミクスの恩恵を日本の津津浦浦に」の発想である。東京一極集中を排し、経済発展の恩恵を地方にばらまくというのだろうか。地方での産業の振興を図る、企業誘致のお手伝いをする、特区制度を活用してもらう、公共事業を実施する。こういったことで、「日本の津津浦浦」が元気になるとは思えない。これで896自治体すべてが再生するだろうか。

  「若い方々が安心して働き、子育てができ、将来に夢や希望を持つことができるような地域を創ることは、我が国が人口減少を克服していく道筋であります」  

 そのとおりである。しかし、そういう地域を創るのは、その地域自身であることを忘れてはならない。地域の自主性が大事。国はお手伝いをする程度のことしかできない。国が地域創生をやってやるから任せなさいと受け取られないようにしなければならない。

  「石破大臣を中心に、現場に積極的に出向き、地域の魅力やニーズ、意欲あふれる取組を把握していただきたい」  

 これは正しい。これこそが、創生本部がやることである。各省から派遣された職員は机の前に座っているのではなく、現場に出て自治体の状況を把握せよ。そうやって収集した情報を分析し、生きたデータベースを作成し、自治体の求めに応じてこれを利用してもらう。これが創生本部の最も大事な仕事である。

  「従来とは異次元の大胆な政策をまとめてまいります」  

 今までの国の施策は、ことごとく失敗であったということの反省の言葉。「異次元の大胆な政策」なんてあるのだろうか。今までそんな政策を打ち出せなかったのはなぜだろう。

  「各府省の縦割りやバラマキ型の対応を断固排除しなければなりません」  

 自治体側から見れば、「縦割り」は困ったことではない。自治体を支援するメニューが幅広く示されていればいいのであって、重複があっても構わない。むしろ、どの省にも適当な支援策がないことのほうが困る。各省間で「支援競争」をしてもらうのは、自治体は歓迎である。困るのは財務省だけ。

 バラマキがダメなのは、「国が地方にくれてやる、やってやる」という発想だからである。地方創生の青写真を描くのは自治体である。その青写真の実現のために国の支援が有用であるなら、自治体がその支援を求めて国に出向いて貰ってくる。それに国(各省)が応じても、バラマキとは言わない。

  「地域の個性を尊重し、全国、同じ枠にはめるような手法をとらないことを徹底してまいります」  

 こういう言い方は、「地方創生、やるのは国だ」という発想からくる。地方創生の青写真を描くのは自治体であって、決して国ではないということをわきまえていれば、出てこない発言である。

 以上、「地方創生、やるのは自治体だ」ということを出発点にしなければ、今回の地方創生の構想も、過去の「ふるさと創生事業」などと同じような失敗を繰り返すことになると言いたくて、私の考えを連ねた。有名私立高校を受験する中学3年生が地方、中学校の先生が国。合格目指して中学生は猛勉強する。先生はいろいろ教示したり支援はするが、代わりに受験するわけにはいかない。これと同じことである。


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